2013 Fiscal Year Research-status Report
梨状葉皮質の興奮性ニューロンからパルブアルブミン陽性ニューロンへの出力の形態計測
Project/Area Number |
25830034
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kawasaki Medical School |
Principal Investigator |
倉本 恵梨子 川崎医科大学, 医学部, 講師 (60467470)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | パルブアルブミン陽性ニューロン / 大脳皮質 / 興奮性ニューロン |
Research Abstract |
本研究課題では、マウス大脳皮質のパルブアルブミン陽性インターニューロンの細胞体や樹状突起に対して、興奮性ニューロン由来の軸索がどのようにシナプス結合するのか形態学的に定量解析を行う。そしてパルブアルブミン陽性インターニューロンをドライブするのは、大脳皮質の何層の興奮性ニューロンなのか解明する。この「from one to group」という戦略により、大脳皮質の局所神経回路の設計図を明らかにし、最終的には大脳皮質の機能を理解することを目指す。大脳皮質の中でも、嗅覚系における中枢のひとつ、梨状葉皮質で解析を行う予定で申請したが、まずは運動野において先行して同様の研究を進めていた。そのため運動野については必要なデータの取得がほぼ終了し、後は詳しく解析し、結果を論文としてまとめるだけといった状況である。運動野での結果を少し紹介すると、Layer (L) 2/3 、L4、L5の興奮性ニューロン由来のすべての軸索終末のうち、約13%から18% のものが、パルブアルブミン陽性インターニューロンに対して、シナプス入力していた。これに対して、L6 の興奮性ニューロンの軸索終末のうち、約 23% のものがパルブアルブミン陽性インターニューロンに対してシナプス入力していた。L6 の興奮性ニューロンはパルブアルブミン陽性インターニューロンを好んでシナプス結合している可能性が示唆された。今後は、運動野で培った実験技術、解析手法をもとに、梨状葉皮質において研究を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
先行して、大脳皮質の運動野で同様の解析を行っていたため、梨状葉皮質での研究は、予定よりも少し遅れている。しかしながら、運動野での研究手法を、梨状葉皮質における研究に適応することで、より速く、スムーズに研究を進めることができると期待される。そのため、当初の予定通り課題研究を遂行できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の予定としては、大脳皮質の運動野において得られた結果の解析を行い、論文としてまとめつつ、梨状葉皮質に対象を移行して研究を進める予定である。運動野において同様の解析を進めていく中で見えてきた問題点がある。申請書では、大脳皮質の興奮性ニューロンをたった1個だけ、しかも軸索末端まで完全に可視化するために、遺伝子改変シンドビスウイルスベクターを用いるとした。パルブアルブミン陽性ニューロンの細胞体と樹状突起が特異的にGFPで標識されているトランスジェニックマウスの大脳皮質に、mRFPを発現させる遺伝子改変シンドビスウイルスを注入して、興奮性ニューロンを標識する。しかし、シンドビスウイルスベクターはランダムに感染するため、特定の皮質層のニューロンを選んで標識し、解析するということが困難である。運動野において、興奮性ニューロンをたった一つ標識するために、細胞内記録・染色法を用いた。細胞内記録・染色法を用いると、特定の皮質層のニューロンを狙って標識することができるため、L2/3 から L6 の興奮性ニューロンを5個ずつサンプリングし、解析することができた。これからトランスジェニックマウスの梨状葉皮質にシンドビスを注入して研究を進めていくなかで、特定の皮質層の興奮性ニューロンは数が少なく、シンドビスウイルスによる標識が難しい、というような問題が生じた場合、予定を変更し細胞内記録・染色法を用いることで解決する。また、標識した単一の興奮性ニューロン全体を可視化し、さらにパルブアルブミン陽性インターニューロンの細胞体と樹状突起を別の色で可視化する明視野二重染色のプロトコール、及びアポジションの解析方法も確立したため、梨状葉皮質において速く研究を進めて結果を得ることができると予想される。
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