2013 Fiscal Year Research-status Report
ブニナ小体を欠く筋萎縮性側索硬化症についての臨床病理学的研究
Project/Area Number |
25830038
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
清水 宏 新潟大学, 脳研究所, 助教 (40608767)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 筋萎縮性側索硬化症 / ブニナ小体 / TDP-43 |
Research Abstract |
ブニナ小体を欠くALSの臨床病理像を明らかにするために、当施設に標本が保存されたALS 150剖検例の診断書を確認したところ、ブニナ小体についての記載がないものは20例あった。うち5例では、人工呼吸器接続などにより罹病期間が長く、変性が高度であることによりブニナ小体が見いだされない可能性が高い一方、残りの15例ではHE染色およびCystatin C免疫染色により、十分数の下位運動神経細胞を観察し得たがブニナ小体は認められず、これら15例を対象とした。SOD1遺伝子変異を有すると考えられるものは8例あり、既報告の3例(A4T変異1例、D101Y変異1例、遺伝子未同定1例)およびその同胞のD101Y変異1例の他に、新たにI105F変異1例、L127S変異1例、遺伝子未同定の2例が見いだされた。また下位運動神経細胞にp62陽性/TDP43陰性の胞体内封入体を持つALSの1例において、p62をコードするSQSTM1遺伝子に変異が認められた。p62免疫染色などにより検索を進めたが、同様の症例はブニナ小体を欠くALS群の中には見いだされなかった。SOD1変異およびSQSTM1変異以外の6例については、淡蒼球・黒質・ルイ体に変性を認める1例の他は、TDP-43陽性封入体の出現を認め、これらには、下位運動神経系に変性が強くグリア胞体内封入体が目立つ例、舌下神経核に変性が極端に強調された例、海馬顆粒細胞を含め、TDP-43陽性神経細胞・グリア胞体内封入体が神経系に広範に出現した例などが含まれていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ブニナ小体はALSを特徴づける病的構造物の1つで、下位運動神経細胞においては、ALSのdisease proteinであるTDP-43の胞体内蓄積と密接に関連する。ブニナ小体がないことは、そのALSの発症に際してTDP-43以外の疾病機序が直接的な引き金となった可能性を示唆している。今回、ブニナ小体を欠くことに注目して病理診断書をスクリーニングすることにより、臨床病理学的に特徴のあるALSを抽出し、その遺伝的背景を模索する素地ができた。具体的には、病理報告の乏しいSOD1変異例については今後症例報告を検討している。また、TFG、CHMP2B、Optineurin遺伝子変異によるALSではブニナ小体が認められないことが報告されており、下位運動神経系の変性が強い例ではTFG、CHMP2B遺伝子を、またTDP-43陽性構造が広範に認められた例ではOptineurin遺伝子を検索する意義がある。
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Strategy for Future Research Activity |
ブニナを欠くALSの原因となりうる遺伝子として、SOD1、TFG、CHMP2B、Optineurinなどが知られている。今回抽出したALS症例について、これらの遺伝子変異例が含まれている可能性があり、症例に応じてこれらの遺伝子解析を行う。またSQSTM1変異を有するALSの病態解析も引き続き行う。p62がオートファジー関連蛋白質であることから、LC3B、HDAC6、LAMP2、CHMP2B、OPTN、NBR1抗体などによる免疫染色、また免疫電顕やウェスタンブロットなどによる病態解析を進める。これらの検討を通じ、研究の全体を総括したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品類の支出が計画より低く抑えられた。 計画の通り遺伝子検索、免疫電顕等に充当し研究を遂行する。
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[Journal Article] Sporadic ALS with compound heterozygous mutations in the SQSTM1 gene.2013
Author(s)
Shimizu H, Toyoshima Y, Shiga A, Yokoseki A, Arakawa K, Sekine Y, Shimohata T, Ikeuchi T, Nishizawa M, Kakita A, Onodera O, Takahashi H.
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Journal Title
Acta Neuropathologica
Volume: 126
Pages: 453-459
DOI
Peer Reviewed
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