パーキンソン病における発症の切っ掛けと増悪：リンパ組織の役割に関する検証

2014 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 25830039
• Research Institution: Shinshu University
• Principal Investigator: 鈴木 絵美(香山絵美) 信州大学, 医学部, 研究員 (80623686)
• Project Period (FY): 2013-04-01 – 2016-03-31
• Keywords: α-synuclein / パーキンソン病

Outline of Annual Research Achievements

本研究の目的は、1.パーキンソン病の発祥の切っ掛けに関与するリンパ組織の検証、2.ドパミン神経細胞死の増悪にリンパ組織が及ぼす役割について検証を行うことである。本年度では、ヒト剖検症例のホルマリン固定パラフィン切片を用いて、以下の成果を得た。
A. パーキンソン病12症例と対照8症例の消化管を用いた。パーキンソン病症例の消化管におけるリン酸化α-Synucleinとマクロファージとの関わりを検討するため、各症例の消化管をリン酸化α-SynucleinとIba-1で二重免疫染色を行った。神経叢のリン酸化α-Synuclein は認められたが、Iba-1陽性細胞にリン酸化α-Synucleinは認められなかった。消化管でパーキンソン病の切っ掛けが生じるとする仮説において、マクロファージは特別関与していない可能性が考えられた。
B. パーキンソン病9症例と対照3症例のウィルヒョウリンパ組織を用いた。対照例を含めた全ての症例でリン酸化α-Synucleinが認められ、陽性細胞数はパーキンソン病症例で0.625平方mmあたり平均4.3個、対照平均3.3個であった。リン酸化α-SynucleinとIba-1の二重免疫染色により、リン酸化α-Synuclein陽性細胞は主にマクロファージであり、T細胞を含むリンパ球細胞ではリン酸化α-Synuclein陽性細胞は明確には認めらなかった。リン酸化α-Synucleinに対する免疫反応にはマクロファージが関与していることが示唆された。
C. パーキンソン病モデルマウスを用いた実験では、発症以前の生後2ヶ月と、発症以降の生後6ヶ月のリンパ節と脾臓を採取した。解析は進行中である。

Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

収集したヒト剖検症例については、作製した標本を観察、解析を進行している。パーキンソン病モデルマウスを用いた実験では、発症前と発症後のマウスを揃えリンパ節および脾臓を採取し標本作製に取りかかっており、最終年度ではこれらの標本を観察、解析を行う予定である。

Strategy for Future Research Activity

（１）収集したヒト剖検症例の消化管のリンパ組織を中心に、リン酸化α―Synucleinの蓄積を検証する。
（２）採取したパーキンソン病モデルマウスのリンパ節と脾臓を、リン酸化α-Synucelinの蓄積と免疫細胞の関与について免疫組織染色を行い、発症前と後でどのような変化が生じているのか比較検討する。

Causes of Carryover

予算額よりも低価格で購入できた試薬・消耗品があったため、次年度使用額が生じた。

Expenditure Plan for Carryover Budget

次年度使用額と平成27年度分を合わせた研究費は研究を推進するため、免疫組織染色標本の作製、標本の解析に研究費を充てる。