2013 Fiscal Year Research-status Report
アミロイド前駆体タンパク質の細胞内輸送抑制によるアミロイドベータ産生阻害剤の探索
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25830041
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
浦野 泰臣 同志社大学, 生命医科学部, 助教 (00546674)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | アルツハイマー病 / 脂質代謝 / 酸化ステロール / 細胞内輸送 / クルクミン |
Research Abstract |
アミロイド前駆体タンパク質(amyloid precursor protein、APP)の細胞内輸送における24S-hydroxycholesterol(24S-OHC)の影響について解析した。ヒト神経芽細胞腫SH-SY5Y細胞において、24S-OHC処理はAmyloid β(Aβ) 40の産生を減少させたが、APP以外の各セクレターゼの基質の切断には影響を及ぼさないことが明らかとなった。またAPP mRNAの発現量は24S-OHC処理下の細胞においても変化しないことをreal-time PCR法により確認した。以前の結果とあわせて24S-OHC処理は細胞内でAPPの小胞体からゴルジ体への小胞輸送を抑制することで、他の基質の切断には影響を与えず、Aβの産生を抑制することを明らかにした。 またクルクミン誘導体について、ヒト野生型APPを定常的に発現するCHO細胞株やSH-SY5Y細胞を用いてスクリーニングを行った。クルクミン誘導体を添加し24時間培養した細胞について、ELISA法やUrea-gel法により培養上清に分泌されたAβ40とAβ42を定量した。その結果、今回検討した10種類の誘導体のうち、クルクミンよりも効果的にAβ産生を抑制する誘導体Xを同定した。細胞毒性の解析では、誘導体XはAβ産生を抑制する濃度では細胞生存率に影響を与えないことが確認された。この誘導体Xで処理した細胞では,小胞体に存在すると考えられる未成熟型APPが増加していた。これらの結果からAPPの小胞体からゴルジ体への細胞内輸送に影響を与えたことで間接的にAβ産生を減少させたのではないかと期待している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目的Iについて、24S-OHC処理がAβ産生を抑制するメカニズムとして、切断酵素であるβやγセクレターゼ活性を抑制するのではなく、APPの細胞内輸送を抑制することで切断酵素への基質の供給を妨げた結果であることを明らかにした。これらの内容をまとめた論文をFASEB Journalに報告した。 目的IIについては、クルクミン誘導体のスクリーニングを行い、Aβ産生抑制効果が認められる誘導体を同定することが出来た。また計画以上の発見として24S-OHCは、低濃度では細胞をストレスから保護する適応反応を誘導する一方で、高濃度では神経細胞にNecroptosisという細胞死形態を引き起こすことが明らかとなった。以上のことから、交付申請書に記した目的における平成25年度の計画は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
24S-OHCはAPPの立体構造を変化させることで小胞体にとどまらせることが予想されたことから、APPに対する予想24S-OHC結合部位の変異体の解析をさらに進める。各変異体の安定発現株を用いて、24S-OHCに対する反応性を解析する。 クルクミン誘導体については、25年度に同定された誘導体Xの作用基序を明らかにするため、セクレターゼ活性の測定や他の基質の切断、APP mRNAの発現量解析を行う。さらにより阻害効果の高い誘導体を探索するために、誘導体Xと類似の構造を持つ別の誘導体について、スクリーニングを進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
学内研究予算を先に利用したため、次年度持ち越し分が生じた。 研究費の使用計画としては、今年度に引き続き次年度においても培養細胞株を用いた実験を行うため、当初の計画通り細胞培養用試薬の購入を計画している。またsiRNA法や免役沈降法等に必要な生化学、分子生物学実験試薬についても購入する。特に抗体の購入費の割合が大きくなることが計画される。加えて産生されたAβの定量に必要なELISA用試薬の購入も予定している。
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Research Products
(5 results)