2013 Fiscal Year Research-status Report
シヌクレイノパチーにおける抗糖尿病因子アディポネクチンの機能解析と治療応用
Project/Area Number |
25830044
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
関山 一成 公益財団法人東京都医学総合研究所, 運動・感覚システム研究分野, 研究員 (40572764)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | シヌクレイン / アディポネクチン / 神経変性 / シヌクレイノパチー |
Research Abstract |
本研究では、抗糖尿病・抗動脈硬化因子として知られているアディポネクチン(APN)に着目し、脳・神経において不明な点が多かったAPNおよびそのシグナル伝達の機能を解明することで、これまで根治療法が見つかっていないパーキンソン病(PD)やレビー小体型認知症(DLB)などのシヌクレイノパチーに対する新規治療ターゲットを見いだすことを目的とする。 平成25年度はαSを恒常的に発現したB103神経芽細胞に対しリコンビナントAPNを添加しシヌクレイノパチー病態におけるAPNの作用を解析した。その結果、i) APN受容体であるAdipoR1を介してAMPキナーゼを活性化させることで αSの凝集を有意に抑制することがわかった。ii) APN添加によりαSのリン酸化や神経細胞からのαS放出が抑制的に制御された。ii) 薬剤による神経毒性(ERストレス、ミトコンドリアやプロテアソームの機能阻害)に対しAPNが神経保護的に作用することが示された。 さらに、αSを発現したトランスジェニックマウスに対しAPNのC末球状ドメインの鼻粘膜投与をおこなった結果、αS発現マウスの神経病理や運動機能が改善する事を観察した。 以上の結果より、APNがシヌクレイノパチー病態において抑制的に作用することが示され、中枢神経系におけるAPNおよびAPNシグナルがシヌクレイノパチーに対する効果的な治療ターゲットになりうる可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成25年度においてはシヌクレイノパチーの細胞モデルを用いAPNの効果を検討し,APNがシヌクレイノパチーの病態を改善することが示された。また、平成26年度に予定していたシヌクレイノパチーモデルマウスに対するAPNの投与実験をおこない、αシヌクレイン発現トランスジェニックマウスにおいて、APN投与により運動機能異常の改善などの治療効果が示された。現在、これらの研究成果をまとめ論文投稿中である。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成26年度以降は、これまで得られたAPNの知見をもとに研究を発展させていく。具体的には、APNの添加によりシヌクレイノパチー細胞モデルにおいて、インスリンシグナルが亢進することがわかってきた。APNによる神経保護効果のメカニズムとインスリンシグナルとの関連を解明する。 さらに、APNノックアウトマウスとαシヌクレインマウスをかけ合わせをおこなう。病理学的検索や炎症性サイトカインの発現量の定量、αシヌクレインの凝集性の検討などをおこない内因性のAPNがシヌクレイノパチー病態にどのような影響をおよぼすか検討する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度にマイクロプレートリーダー(一台750千円)購入予定であったが、研究に用いている遺伝子改変マウスの遺伝子診断に用いているサーマルサイクラーが故障してしたため、研究の遂行のためサーマルサイクラーを新たに購入した(一台493千円)。 また、研究の進展に伴い、免疫染色に使用する抗体を購入するための資金が平成25年度において必要ではなくなった。これらの合わせた差額のため次年度使用額が生じた。 平成25年度の繰り越し分と平成26年度の請求金額と合わせマイクロプレートリーダー(一台750千円)を購入予定である。
|