2013 Fiscal Year Research-status Report
ウイルスDNAを標的としたEBV疾患モデルマウスでの新規治療法の開発
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25830070
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | National Research Institute for Child Health and Development |
Principal Investigator |
松田 剛 独立行政法人国立成育医療研究センター, 母児感染研究部, 研究員 (60392130)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 感染症 / ウイルス / 癌 / 応用動物 / トランスレーショナルリサーチ / 人工ヌクレアーゼ / 遺伝子治療 |
Research Abstract |
Epstein-Barrウイルス(EBV)は様々な腫瘍性疾患に関与する。EBVには特効薬はなく移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)の抑制は今後の再生医療技術の成否の鍵を握る為、早急に抗ウイルス薬や新規治療法の開発が望まれる。申請者は既に肝臓などにリンパ腫を誘発するEBV疾患モデルマウスの作製に成功しており、EBVの腫瘍の原因の一つがEBNA1である可能性を見出した。本研究はDNAヌクレアーゼを利用したEBVゲノムを改編する新規治療法の開発を目指し、マウス内でEBV関連疾患の治療を試みる。 平成25年度は、1、改良レンチウイルスベクターの作製、2、DNAヌクレアーゼ含有レンチウイルスの作製、3、in vitroでEBV感染細胞株のEBNA1の発現抑制の確認を実施計画としていた。しかしながら、急速に人工ヌクレアーゼの研究分野が進歩発展し、申請時にはZinc finger nuclease(ZFN)やTranscription Activator-Like Effectors nuclease(TALEN)といった2ヶ所での認識による配列特異的DNA切断ツールしかなかったが、現在1か所での認識による切断可能なCas9ヌクレアーゼとguide RNA によるCRISPR/Cas9システムや、Compact TALENが利用出来る。本年度はレンチウイルスベクターに含有させる切断ツールの有効性について検討を行った。 1、Compact TALEN、2、CRISPR/Cas9システム、それぞれ2か所でEBNA1特異的人工ヌクレアーゼを作製した。そのうち、CRISPR/Cas9システムの一つがEBV感染細胞株のEBNA1遺伝子を効果的に切断した。 今後はCRISPR/Cas9システムをレンチウイルスベクターに導入し、マウス内でのEBV関連の腫瘍抑制効果を検証する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画とはかなり異なったが、これまでの計画で1、改良レンチウイルスベクターの作製および2、DNAヌクレアーゼ含有レンチウイルスの作製にはHIV-1 Vprによる人工ヌクレアーゼのウイルス粒子への取り込みを計画していた。しかしながらVprに融合するタンパク質の分子量が大きくなればウイルス粒子形成に影響が出てくる。またこれまでの2分子で1か所を切断するダブルモジュール型のヌクレアーゼでは1分子で切断効果のあるCas9やCompact TALENに比べて、取り込み量が2分子必要なため半減する。今回EBNA1の切断効果の得られたCas9は分子量が大きくVprによる取り込みにはむかない。現在Cas9とguide RNA配列を発現出来るレンチウイルスベクターが利用可能であり、今後は今回得られた配列をレンチウイルスベクターに導入し、EBV感染細胞のEBNA1の発現抑制効果を免疫不全(NOG)マウスでの病態変化により確認出来ると考えている。 3、in vitroでEBV感染細胞株のEBNA1の発現抑制の確認だが、EBNA1にはGly、Ala に富む領域がある。当初、EBV感染細胞には全てEBNA1が発現しているので、人工ヌクレアーゼの切断効果をEBNA1全長のPCRで確認しようとしたが、Gly、Ala に富む領域を含むと非特異的なバンドが走って、切断効果を正しく確認できなかった。いくつかの細胞株を試した結果、Rajiで全長のEBNA1をPCRで走らせることが出来た。RajiのEBNA1は野生型のEBNA1より分子量が小さく、おそらくGly、Ala に富む領域が欠損していると考えられる。これらの結果より、Rajiに導入したCRISPR/Cas9はEBNA1を効果的に切断できたことが確認できた。来年度につながる成果であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は今年度、1、in vivo EBVリンパ腫モデルマウスでのEBNA1発現抑制による肝臓の腫瘍抑制効果の検証、2、in vivo EBV感染ヒト化マウスでのEBNA1発現抑制によるリンパ増殖疾患抑制の検証を行う予定であったが、CRISPR/Cas9システムのDNA切断効率は遺伝子発現量が低いと切断効果が弱いため、CRISPR/Cas9システム含有レンチウイルスをin vivoでEBV感染細胞にだけ感染させることが難しく、in vitroで感染させたEBV感染細胞株をNOGマウスに移植する方法で行う。昨年度の研究計画の変更に伴い、今後は以下のように計画する。 1、CRISPR/Cas9システムをレンチウイルスベクターに導入、(1)EBNA1配列特異的切断効果のあるguide RNAとあまりない配列をコントロールとしてCas9発現レンチウイルスベクターに組み込む。 2、in vitroでEBV感染細胞株のEBNA1の発現抑制の確認、1で作製したウイルスをRajiやLCLなどEBV感染細胞株へ感染させる。(1)Western blotting、RT-PCRでEBNA1の発現量の変化を確認する。(2)Real time PCRによりEBVウイルスDNA量の変化を確認する。 3、in vivo EBVリンパ腫モデルマウスでのEBNA1発現抑制による腫瘍抑制効果の検証を行う。(1)EBV感染細胞株にCRISPR/Cas9含有レンチウイルスを感染させ、NOGマウスに移植する。(2)衰弱により解剖したマウスから各臓器のウイルスDNA量の測定およびホルマリン固定により免疫染色に使用する。特に腫瘍の程度がひどい臓器からRNAを抽出し、RT-PCRによる遺伝子発現解析を行う。(3)再現実験を行い、生存曲線や臓器のコピー数などのデータ解析を統計的に行い、腫瘍抑制効果を検証する。
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