2013 Fiscal Year Research-status Report
ミトコンドリア局在型熱ショックタンパク質90の機能調節による癌治療戦略
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25830075
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
吉田 宗一郎 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 助教 (80383280)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | TRAP1 / 尿路上皮癌 |
Research Abstract |
ミトコンドリア内に局在する分子シャペロンであるTumor necrosis factor receptor-associated protein 1 (TRAP1)の分子生物学的機能や制御機構は未だ明確ではありません。研究者はこれまで、TRAP1はミトコンドリア内に局在するcSrcとの結合を介し、酸化的リン酸化の抑制に働いているという新知見を発見し、TRAP1の抑制により、酸化的リン酸化が活性化され、ATP産生の上昇、活性酸素産生の上昇を介し、細胞の遊走能が亢進されることを見いだしております。 そこで、尿路上皮癌でのTRAP1の臨床的意義を評価するべく、腎盂尿管癌の診断のもと、1990年6月から2006年11月の間に腎尿管全摘が施行された62例(pTa/is/1: 17例、pT2/3/4:45例; Grade1/2: 28例、Grade3: 34例)の切除標本を使用し、免疫組織学的染色にて腎盂尿管癌内のTRAP1発現の評価を行いました。TRAP1の発現は腎盂尿管癌内にて均一ではなく、腫瘍の浸潤部位は表在部位と比較して低下している傾向が確認されました。TRAP1発現と病理組織学的特徴との比較を行ったところ、TRAP1陰性癌では陽性癌と比較し、統計学的には有意ではないものの、進達度が高い傾向が示されました。その一方で、異型度およびリンパ管侵襲の有無には差がみられませんでした。また、TRAP1発現は、多変量解析にて、異型度およびリンパ管侵襲の有無と同様に、腎尿管全摘除後の癌特異的生存期間の独立した有意な予測因子であり、TRAP1陰性癌の5年癌特異的生存率はTRAP1陽性癌と比較して有意に不良でありました。以上より、腎盂尿管癌においてTRAP1が細胞浸潤を抑制し、その発現が有用な予後予測因子となり得る可能性が示唆されました
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
TRAP1に対する過去の知見から予測される、その臨床的意義が、腎盂尿管癌の切除検体を利用した研究により示されている。
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Strategy for Future Research Activity |
腎盂尿管癌におけるTRAP1の発現と臨床経過の比較から得られた、TRAP1の臨床的意義についての知見をヒト尿路上皮癌細胞株を利用し、基礎的知見から再検証を行う。 臨床的意義から示唆されるTRAP1と浸潤能の関係について検討を行うべく、TRAP1の過剰発現系と抑制系を使用し検討を行う。それぞれの系は、尿路上皮癌細胞株である5637を使用し、ほぼ確立できているため、順調に研究を遂行できるものと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度では臨床検体を使用した免疫組織学的実験を主とし実験の遂行を行った。初年度に得られた知見をヒト尿路上皮癌細胞株を使用し、追加検討を行うことが初年度には終了しなかったため、次年度に、同実験を施行する実験計画を立てている。 ヒト尿路上皮細胞株培養を行い、TRAP1の過剰発現系、発現抑制系の評価をWestern blot法にて評価した上で、、TRAP1の変化による浸潤能の変化を、In vasion assayにて行う。また、TRAP1の変化により誘導される系が、活性酸素を介していることを確認する。
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