2013 Fiscal Year Research-status Report
癌特異的蛍光プローブによるリアルタイム可視化技術を応用した乳癌治療法開発
Project/Area Number |
25830102
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | National Hospital Organization, Kyushu Cancer Center |
Principal Investigator |
秋吉 清百合 独立行政法人国立病院機構(九州がんセンター臨床研究センター), その他部局等, その他 (50567360)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 乳癌 / 蛍光プロ―ベ / 診断 |
Research Abstract |
近年乳癌手術において早期乳癌の割合が増加しており、乳房全摘術から乳房温存術の割合が増加してきている。しかし、乳房温存術では切除断端がしばしば問題となる。部分切除して標本を術中迅速診断により断端判定を行うが、癌を可視化できれば術中での癌摘除の正確性向上が見込まれる。GGT蛍光プローベは容易に細胞膜を通過して短時間で発光し、患者や医療スタッフに安全に使用出来るため、「外科手術中の癌細胞の検出」での応用が期待されている。gGlu-HMRG probeは、癌細胞表面に高発現しているGGTに特異的に結合反応するベンゼン環を持つことでGGT高発現である癌細胞に対し強い蛍光を示し、癌細胞を可視化することを可能とした。 今年度は、乳房部分切除術6例で薄切した11検体のうち、固定後のHE標本に癌部が存在し、かつその癌部に対応する蛍光が確認できた、3症例3検体で実験を行った。 3検体それぞれに対してgGlu-HMRG投与直後(0-1分)、5分後、10分後、15分後、20分後、30分後と蛍光写真を撮影した。その結果、 各画像で一定の蛍光強度を認める部位114カ所において、テストセットでのthresholdである8を下回ったのは15カ所で、癌部は含まれていなかった。また、thresholdを超えたのは99カ所であり、癌部8カ所は全てその中に含まれていた。感度は100%、特異度は16%、陽性的中率は8%、陰性的中率は100%となった。 以上のごとく、gGlu-HMRGによる蛍光法により、テストセットでは腫瘍部と正常組織とを感度89%、特異度97%で識別することが可能であった。このテストセットの結果を用いて、乳房分切除術中の断端標本中に存在する癌部を検出できるかどうかを検討した。結果、感度と陰性的中率が100%となり、断端標本において、全ての癌部を蛍光陽性として描出することが可能であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、gGlu-HMRG probeによって乳癌原発巣(癌とDCIS)において100%、また乳腺良性腫瘍において100%の蛍光反応を認めた。乳癌細胞株5種類は、gGlu-HMRG probe投与直後からすべての細胞に蛍光陽性を認めた。 今年度は断端診断をさらに精度を高めて解析した。一定の蛍光強度を認める部位114カ所において、テストセットでのthresholdである8を下回ったのは15カ所で、癌部は含まれていなかった。また、thresholdを超えたのは99カ所であり、癌部8カ所は全てその中に含まれていた。感度は100%、特異度は16%、陽性的中率は8%、陰性的中率は100%となった。 今回、乳房部分切除術の断端評価を行った11検体のうち、4検体ではHE標本で癌部が存在しなかった。また、他の4検体ではHE標本では癌部が存在するものの、それに対応する構造、あるいは蛍光部分が確認できなかった。これら8検体は今回の断端評価からは除外した。前者4症例については、今回、癌組織の検出をアウトカムとしたため除外した。また、後者4症例については、HE標本作製時の薄切作業によって、写真撮影時には露出していなかった癌部が薄切によって露出してしまった可能性が高いと考え、除外した。 また、蛍光がある部位として抽出できたROI 260カ所のうち、その半数以上の146カ所で癌部か癌部でないかの判定が困難であった。蛍光写真とHE標本の写真では、ホルマリン固定の際に変形をきたすこと、薄切の際に断面がわずかにずれること、がその原因と思われる、本検討の限界である。
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Strategy for Future Research Activity |
gGlu-HMRGによる蛍光強度は、癌細胞ひとつひとつのGGT発現強度と癌細胞密度の積を反映している。断端評価において癌細胞と一致したROIの平均光強度の5分値−0分値は最大で61.7au、最小で27.6auとなった。一方、テストセットの癌部でのそれは、最大90au、最小0auとかなりの幅があった。テストセットでのROIは癌細胞のみが存在する部位を抽出していると思われるため、この幅はGGT発現の癌組織ごとのheterogeneityを反映している可能性がある。 断端評価における癌部のROIには、癌部だけではなくDCIS周囲の乳管やその周辺組織も含まれていると思われるが、5分値−0分値の幅はテストセットのそれよりも小さくなった。今回は3検体での検討となっているため、乳癌のheterogeneityを少ししか反映していない可能性がある。今後、より多数症例での検討を行う必要と考えられ断端解析症例数を増やしたい。 さらに、リンパ節転移における有用性についても検討を加える必要があり、現在、鋭意実験中である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の実験に使用予定の為。 次年度消耗品に使用予定。
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