2013 Fiscal Year Research-status Report
64Cu標識抗体PETイメージングにおける非特異的集積に関する研究
Project/Area Number |
25830107
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
金山 洋介 独立行政法人理化学研究所, ライフサイエンス技術基盤研究センター, 研究員 (60435641)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 抗体PET / Cu-64 / Zr-89 / フラグメント化抗体 |
Research Abstract |
抗体医薬を用いたがんPETイメージング法の開発において患者被ばくを低減し短時間で実施可能なCu-64標識抗体イメージング法の確立が期待される。本年度は体内動態を調節するための抗体分子のフラグメント化法に関する検討と、標識安定性向上のための種々のキレート分子を用いた標識前駆体の合成法に関する検討を行った。 抗EGFR抗体Cetuximab、抗HER2抗体Trastuzumabを固定化パパインまたは固定化ペプシンを用いて消化し、Fab化、F(ab’)2化を行った。後のイメージングのため、これらフラグメントをHPLCスペクトルとして99%以上の純度で精製する手法を確立した。作成したFab、F(ab’)2フラグメントの抗原親和性は分子間相互作用解析装置によって測定し、元の抗体と比較してほぼ同程度の活性を確認した。 標識前駆体化に関しては、各種キレーターとの結合とCu-64標識について検討を行い、DOTA、NOTA、NODA-GA、PCTAを用いたCu-64標識化に成功した。一方、Cu-64標識プローブの長期的な体内動態を正確に知るためにより長時間の追跡を可能にするZr-89標識抗体作成法の最適化が必要である。Deferoxamine-p-SCNを用いて反応モル比、温度、pH、バッファーの種類について複数の条件で検討を行い、MALDI-TOF-MS測定によるキレーター修飾数の測定の結果、活性を維持した効率的な修飾が可能となった。Zr-89の標識を行った所、修飾数が増加するに伴い、精製時のロスが顕著に増大した。また担癌マウスに投与しPETイメージングした所、キレーター修飾数0.5、1.4の抗体で4-9日後の標的がんへの高集積を確認した。修飾数の多いプローブでは肺内部に塞栓による高集積スポットを複数生じ、凝集性が高いと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画ではCu-64標識プローブにおける血中滞留性、EPR効果の影響、標識安定性などに関する検討を中心に行う予定であったが、本年度はフラグメント化抗体の作製法、各種キレーターの修飾法、とくにZr-89標識抗体作成法の最適化を中心に進めた。このことは研究計画が遅れたのではなく、より効率的に進めるための方策と考えている。つまり、研究全体の進行と現在の抗体イメージングにおける主流と言えるZr-89抗体PETの重要性を考えた上で、Zr-89標識法の最適化と、Cu-64標識フラグメント化抗体プローブや種々のキレーターの検討を行う際に都度Zr-89標識体との比較を行うことが必要と考えた。このため当初計画の平成25年度実施予定の内容に関する達成度はやや低いと言えるが、研究全体としてはおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
フラグメント化抗体におけるCu-64標識化、Zr-89標識化と、体内動態、血中滞留性、錯体安定性に関する検討を進める。更に肝貪食能に関する検討やEPR効果に関する検討もCu-64標識とZr-89標識の比較を行いつつ当初計画に沿って行う。これらのデータを集積しつつ、撮像タイミングや特異的集積の判別に関して動物実験と臨床で外挿できない・できていない要因について周囲の研究者や臨床の技師や医師とも相談し、効果的な実験モデルを探索する。 また、標識部位解離リンカーを使用した標識プローブ合成の検討に関しては所属機関における化学を専門とする研究者らとの相談を行いつつ、有用なリンカーの探索を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初計画を見直し、27年度に計画していたZr-89標識核種との比較検討を実験項目ごとに行う必要性を認めたため、先にZr-89標識抗体作成法に関する最適化を行った。そのため、予定していた血中安定性や標識安定性に係る動物実験への費用を使用しなかった。また、Zr-89標識の最適化に要する費用が動物実験へ予定していた費用より少なかった。このため、次年度使用額が生じた。 当初の26年度実施計画の実験および25年度に実施しなかった実験をCu-64標識プローブとZr-89標識プローブとを比較しながら実施するため、当初の26年度実施計画より必要経費は増加する。今回生じた次年度使用額はこれに全額使用する。
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