2014 Fiscal Year Research-status Report
64Cu標識抗体PETイメージングにおける非特異的集積に関する研究
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25830107
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
金山 洋介 独立行政法人理化学研究所, ライフサイエンス技術基盤研究センター, 研究員 (60435641)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 抗体PET / Cu-64 / フラグメント化抗体 / DOTA / NOTA / NODAGA |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は昨年作成法を確立した抗HER2抗体TrastuzumabのFab及びF(ab')2フラグメントに対しDOTA-NHS-ester、p-SCN-Bn-NOTA、NODAGA-NHS-esterの三種類の二官能性キレーターを用いてCu-64 標識プローブを作成し、担がんマウスを用いたPETイメージング試験によりそれぞれの体内動態、組織分布、がん集積性等を比較した。 結果として、いずれのプローブでも投与後1h以内に腎臓への高集積が見られ、また、Fabでは投与後1hから4hの間に心臓の集積がほぼ消失する挙動を示した。しかし一方でDOTA標識体ではFab, F(ab')2ともに投与後24hまで肝臓への集積増加が見られた。またNODAGA標識体ではF(ab')2では肝集積は投与後1-48hでほぼ変化しなかったが、Fab体では肝集積が増加した。それに対しNOTA標識体ではF(ab')2で肝集積は経時的に減少し、またFab体でも肝集積増加は全く見られなかった。血中(心臓中)放射能が減少した後の肝集積増加は投与プローブによるものではなく、解離Cu-64に依ると考えられる。DOTAより銅結合安定性の高いNOTA型のキレーターであってもリンカー構造の違いにより体内におけるCu-64標識安定性は大きく異なることが示された。HER2 陽性がん集積/陰性がん集積比、HER2陽性がん集積/筋肉集積比を見るとF(ab')2ではNOTA標識体が最も高く、FabではDOTA標識体が最も高い結果となった。F(ab')2に比べ分子量の小さいFabは血中滞留時間がより短く、腎臓へ集積し代謝の影響を受け易いため、解離Cu-64集積の影響が大きくなったと考えられる。Cu-64-NOTA標識F(ab')2が最も高精度に抗原発現を検出可能であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は特にフラグメント化抗体について中心的に検討を行うことで標識安定性が非特異的集積に与える影響に関する知見を得た。キレーターからのCu-64解離はプローブが細胞内に取り込まれ、分解等の代謝を受けた際に生じていると推測される。解離したCu-64は生体内の銅代謝と同様に血中アルブミン等に結合して再分布し、肝臓を中心とした生理的必要組織に取り込まれて行くことになる。実際にFabプローブ投与後42hでの血中サンプルのゲル電気泳動結果では、Fabより高い分子量70kDa程度の位置にバンドを確認している(ARGで検出)。フラグメント化による体内動態の変化、血中滞留性への知見も得られ、短時間でのがん描出におけるF(ab’)2の有効性を示した。昨年度に比べ大きく進捗し、研究計画全体に対しおおむね順調に進んだと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は今まで行ってきた全量抗体での検討結果と併せ、Zr-89標識抗体を用いた検討と比較しつつ、肝集積、腎集積の低減と、それによる血中分布、標的がん集積の増加を狙った検討を行う。肝貪食能に関して、マウスではヒト抗体に対しFc受容体活性がないため、影響を検討することができない。そこでヒト抗体への活性があるとされるラットを用いることで臨床試験での報告(Dijkers et al., Clin Pharmacol Ther. 2010;87:586-92) と同様に非標識体投与による肝集積の低減や炎症部位へのEPR効果等について検討が可能になると考えている。これらの検討を総合し、非特異的集積を低減したCu-64標識抗体および抗体フラグメントによるPETイメージング法を確立する。
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Causes of Carryover |
フラグメント化抗体の実験結果から、昨年度計画していたZr-89標識体との比較は全量抗体で行うことが妥当と判断し、Cu-64標識安定性に関する検討を優先したため、予定より使用額が減少した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今後の推進方策に示した様にラットも用いた検討を行う予定であり、またZr-89標識プローブとの比較も実施していくため、前年度引き継ぎ分と合わせて全額使用する。
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