2013 Fiscal Year Research-status Report
近赤外レーザーによる膵癌治療応用を目指した基礎的検討
Project/Area Number |
25830114
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
大野 栄三郎 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (00447822)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 近赤外レーザー / 膵癌 |
Research Abstract |
膵癌は極めて予後の悪い癌である。現在において治癒が期待できる治療法は外科的切除のみである。しかしながら、切除できる膵臓癌は診断されたなかの20%と低い。そこで我々は新たな治療法として、近赤外線を用いた治療の開発をおこなうことにした。近赤外線はケロイドなど皮膚損傷の修復といった医療応用から老人性斑の除去などでも活用されている。また近年、癌細胞を死滅させる効果があることも報告されている。 昨年度我々は915nmの近赤外線が膵臓癌にどのような効果があるかを検討した。1-30Wの出力で照射径1.5mmの915nmの近赤外線を照射できる機械を作成した。それを用いて様々な出力、時間で膵臓癌に照射し、その影響を観察した。用いた膵臓癌細胞はKP4、PK9、MIA-PaCa2である。これらの3種類の細胞を96穴に培養し、時間と出力を変えた条件で近赤外線を照射し、細胞の形態変化を24時間観察した。その結果、条件によっては細胞が死ぬことが観察された。さらに確認するため、細胞死を検出するTUNELアッセイをおこなった。その結果、多くの細胞で細胞死が誘導されることが判明した。現在のところ、3Wで3分の照射では細胞死はほとんど観察されないが、4Wで5分の照射ではMIA-PaCa2とKP4において10%ほどの細胞死が観察される。さらに出力をあげ、5Wで5分の照射では、どの細胞においても3割以上の細胞死が観察された。温度を測定したところ、近赤外線により上昇がみられたが、細胞死がおこる42度までの上昇は見られなかった。以上のことから、近赤外線照射は膵臓がんに細胞死を引き起こすと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
様々な出力の近赤外線を用いて膵臓癌細胞が細胞死をおこす条件を検討し、3Wで3分間の照射でおよそ10%の細胞に細胞死が誘導されることが分かった。また、この条件では細胞死を起こすような高温に達しないことから、温度によるものではなく、他の要因により細胞死が引き起こされると考えられる。当初の計画では細胞死を起こす最小限の閾値を明らかにすることが主な目標であったため、実験は順調に進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
近赤外線照射によりどのようなメカニズムで細胞死が誘導されるかを検討する。細胞死に関係する様々なタンパク質の発現やタンパク質の修飾を免疫染色などの手法を用いて調べる。また、細胞死に必須なシグナル経路の阻害剤などを用いて細胞死に関わるシグナルを同定する。 マウスを用いた実験をおこなう。ヌードマウスに生着させた膵癌に対して近赤外光を照射し、照射後の腫瘍抑制効果について、組織学的所見(腫瘍組織量、腫瘍増殖能など)を評価する。近赤外レーザーの出力、時間、照射回数などを変えた様々な条件で実験をおこなう。その際、レーザー照射による熱発生及び熱による細胞死を否定するため、照射野を冷却するためのクーリングプローブを準備し併用する。また、近赤外線の効果がどの程度の深部まで到達するかを明らかにする。
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