2013 Fiscal Year Research-status Report
免疫抑制機構と腫瘍特異性の両方を制御する遺伝子改変技術を利用した癌免疫療法の開発
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25830118
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
佐古田 幸美 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30629754)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | キメラ抗原受容体 / 免疫抑制シグナル |
Research Abstract |
キメラ抗原受容体(CAR : chimeric antigen receptor)とは、癌細胞の細胞表面抗原を認識する蛋白であり、これを癌患者の末梢血T細胞に遺伝子導入することにより癌細胞を認識し攻撃するT細胞を作製できる。CARを利用した腫瘍反応性T細胞(CAR-T細胞)による免疫療法は特にB細胞系血液系悪性腫瘍に対しその治療効果が報告されている。 一方、癌免疫療法の問題の一つにPD-1分子を介する免疫抑制シグナルがある。PD-1は抗腫瘍免疫反応の抑制機序として重要であり、PD-1の機能阻害により腫瘍反応性T細胞の活性化の促進と強力な抗腫瘍効果の誘導が報告されている。そこで本研究では、CAR-T細胞のPD-1シグナル阻害によるCAR-T細胞の傷害活性機能の増強について検討した。 まずRNA干渉法を用いてCAR-T細胞におけるPD-1発現を低下させることが可能かどうかを検討した。PD-1分子に対するRNA干渉は、すでに論文で報告されているsiRNA配列や我々が独自に同定したsiRNA配列などを用いCAR-T細胞に遺伝子導入したがCAR-T細胞上のPD-1発現レベルの低下は認められず、何らかの理由によりCAR-T細胞ではRNA干渉による遺伝子発現制御が困難であることが示唆された。 PD-1分子はチロシン脱リン酸化酵素であるSHP-1を誘導してT細胞の活性化を抑制する。そこで、SHP-1の機能を失ったSHP-1ドミナントネガティブ変異体(SHP-1 DN)をT細胞に遺伝子導入しSHP-1 DN発現によりPD-1抑制シグナルを阻害しうるCAR-T細胞を作製したところ、通常のCAR-T細胞に比べSHP-1 DN CAR-T細胞は癌細胞に対し優位に高い傷害活性を示すことが明らかとなった。このように、腫瘍特異性を有すると共にSHP-1DN発現によりPD-1抑制シグナルを阻害しうるCAR-T細胞を作製できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していたRNA干渉法では期待していた結果は得られなかったものの、別の方法によりCAR-T細胞の機能増強の結果が得られたため。
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Strategy for Future Research Activity |
我々は、CARの発現により腫瘍特異性を誘導したT細胞において、PD-1チェックポイント分子による免疫抑制シグナルを阻害するSHP-1 DNをさらに導入することにより、高い腫瘍傷害活性が得られることを示した。このことは本研究により開発された遺伝子改変技術がより効果的な癌免疫療法の基盤となることを示唆している。今後はin vivoの腫瘍増殖試験にて、SHP-1 DN発現CAR-T細胞の腫瘍拒絶効果について検討、解析する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初実施計画していたRNA干渉法ではPD-1の発現低下が得られず途中で方法を変更し、siRNAの遺伝子導入のためのレンチウイルス作製等に係る試薬分が使用されなかったため。 今年度はドミナントネガティブSHP-1発現によるCAR-T細胞の抗腫瘍効果の増強がin vitroで確認できたことから、次年度は計画通りin vivoでの腫瘍効果を検討すると共に、ドミナントネガティブSHP-1によるCAR-T細胞の機能増強のPD-1やそれ以外の免疫抑制シグナルを介したメカニズムについて解析する予定であり、それらの解析費用に充当する。
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