2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25830125
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Japanese Foundation for Cancer Research |
Principal Investigator |
高木 聡 公益財団法人がん研究会, がん化学療法センター基礎研究部, 研究員 (20582240)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 癌 / 分子標的治療 / 血小板凝集 |
Research Abstract |
研究代表者は、血小板と共培養するとがん細胞の増殖が促進されることをこれまでに見出していた。また血小板とがん細胞が接触可能な条件下でのみ、がん細胞の増殖亢進が認めれることを明らかにしていた。そこで本研究課題では、血小板との共培養により生じるがん細胞の増殖促進に、血小板から分泌される顆粒内サイトカインと細胞膜表面タンパク質のどちらが関与しているのか、あるいは両者ともに関与しているのかを検討した。 1、血小板の顆粒成分と膜成分のがん細胞増殖に与える影響の検討 血小板をコラーゲンまたはADPで刺激することで顆粒成分を分泌させて顆粒成分を含む上清を回収すると共に、凝集反応後のペレットを回収して膜成分の可溶化を試みた。しかし、ペレットが硬くかつ粘性が高いため、膜成分の分画はできなかった。一方で、凝集反応後の上清にがん細胞の増殖を顕著に誘導する活性が認められ、血小板に内包されている増殖因子・サイトカインががん細胞の増殖を促進している可能性を見出した。 2、がん細胞の増殖に関わる血小板顆粒成分の同定 1の検討から、血小板凝集に伴い分泌される顆粒内増殖因子・サイトカインががん細胞の増殖を促進している可能性が示唆されたため、サイトカイン受容体・増殖因子受容体のリン酸化レベルを検討できる抗体アレイを用いて血小板より分泌されるサイトカイン・増殖因子のスクリーニングを行なった。その結果、血小板との共培養時に、がん細胞のPDGF受容体が活性化されることを見出した。そこで、がん細胞依存的に誘導される血小板凝集時にPDGFが分泌されているかどうかをELISA系で定量したところ、がん細胞との共培養により有意にPDGF分泌が増加することが確認された。よって、血小板との共培養により生じるがん細胞の増殖促進に、血小板から分泌されるPDGFが関与することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
血小板と共培養した際にがん細胞の増殖が促進される機構の1つに、血小板凝集時に血小板より分泌されるPDGFが関与していることを見出すことに成功した。実際に、がん細胞のPDGF受容体のリン酸化も確認されていることから、血小板によるがん細胞の増殖促進にPDGFが主要な役割を果たしていることが強く示唆されている。 一方で、これまでのTranswell chamberを用いた検討から、血小板とがん細胞が直接接触できないとがん細胞の増殖が促進されないことも明らかとなっている。Transwell chamberで血小板とがん細胞が直接接触できないように仕切った場合、血小板凝集自体が起こらなくなってしまうことから、PDGFの分泌がTranswell chamberを用いた系では起きず、その結果として増殖亢進が認められない可能性もあるが、接着分子などの膜表面タンパク質を介したがん細胞の増殖促進機構が関与している可能性もある。そこで血小板をコラーゲンまたはADPで刺激した際のペレットより膜成分の分画を試みたが、ペレットは硬くかつ粘性が高かったために分画はできず、膜タンパク質の関与は証明できなかった。今後は、巨核球細胞株などを用いることで、接着分子などを介した血小板によるがん細胞の直接的な増殖促進機構を解明していきたい。 平成25年度に、本研究課題で目的としている血小板によるがん細胞の増殖促進に関わる分子機構の一部としてPDGFを見出すことができたため、「おおむね順調に進展している」と自己評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題では、これまで見過ごされてきた血小板による腫瘍微小環境の構築の可能性を検証すると共に、その分子機構を標的とした新たな抗腫瘍剤の開発を目的としている。 この目的に沿って、血小板との共培養により増殖が促進されるがん細胞の同定と、そのがん細胞を用いた血小板による腫瘍増殖機構の解明に取り組んできた。これまでに、血小板より分泌されるPDGFががん細胞の増殖を促進することを見出すことに成功したが、もう1つの可能性として考えられた血小板膜タンパク質によるがん細胞の増殖促進は、血小板膜タンパク質の分離が難しいことから難航している。そのため、血小板産生に関わる巨核球の細胞株であるMEG01S細胞を用いることで、膜タンパク質による増殖促進の可能性を検討していきたいと考えている。 Transwell chamberで血小板とがん細胞が直接接触できないように仕切ってしまうと、血小板凝集自体が起こらなくなってしまうことが明らかになっていることから、血小板とがん細胞の直接的な結合は血小板凝集を惹起することのみに関与しており、血小板膜タンパク質ががん細胞の増殖を促進していない可能性もある。そのため、血小板とがん細胞の直接的な結合による増殖促進の分子機構を解析するだけでなく、直接的な結合による血小板凝集誘導の検討も平成26年度に行なう。
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Research Products
(6 results)