2013 Fiscal Year Research-status Report
小脳・脳幹部低形成を伴う発達遅滞を呈する疾患群の包括的病態解明
Project/Area Number |
25830135
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
林 深 東京医科歯科大学, 硬組織疾患ゲノムセンター, 特任講師 (50596244)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 疾患関連遺伝子 / 先天異常疾患 |
Research Abstract |
申請者らは、種々のゲノムアレイを用いた先天異常疾患スクリーニングから、Xp11.4に座位するCASK遺伝子の女性におけるハプロ不全が小頭症・小脳脳幹部低形成を伴う精神遅滞 (mental retardation and microcephaly with pontine and cerebellar hypoplasia; MICPCH)の原因となることを見いだしたことを契機として、MICPCHの疾患原因を包括的に明らかにすることを目標とする研究を行ってきた。 平成25年度末までにMICPCHの典型例40例、非典型例3例を収集してCASK遺伝子の解析を行い、30/40例 (70%)に疾患原因につながるゲノム異常を検出してきた。一方、この解析で陰性であった症例と非典型例の合計13例に対しては、新規疾患原因遺伝子を探索するために本人と両親のトリオを対象として、次世代シークエンサーを用いたスクリーニングを行い、その他の疾患原因を探索している。具体的には、1)CASKの全長ならびに既知の頭症・小脳脳幹部低形成の疾患原因遺伝子19種類をターゲットとしたターゲットリシークエンス、2)全エクソンシークエンス を計画し、現時点では1)では有意な変異は見いだされず、漸次2)による解析を新学術領域「ゲノム支援」のもと施行中である。 また、6q21微小欠失を有するMICPCH症例より、ヒストン脱アセチル酵素をコードするHDAC2がやはり疾患原因となる可能性を検討しており、神経由来のセルラインに対するsiRNAによる発現抑制系を用いて、HDAC2と隣接するMARCKSのハプロ不全が正常な中枢神経発達を阻害する可能性をin vitroにて検証している。 なお、MICPCH症例並びに両親サンプルの収集は継続して行っており、疾患原因を明らかにすることで原因不明症例の診断に寄与するだけではなく、新規症候群としての知見を蓄積し、予後予測や療育方針の決定に寄与し、患者会の形成により患児・両親間の交流を図るなど、臨床・研究の両面における成果が得られている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者らは本研究期間内に以下の点を明らかにすることを目標として設定した。それぞれ現時点での進捗を併せて記したとおり、各目標1~3概ね順調に進捗していると判断する。 1.【目標】CASK異常陰性のMICPCH症例を対象とした新規疾患原因遺伝子の特定。 【進捗】これまでに収集解析してきたMICPCHの典型例40例、非典型例3例のうち、CASK変異陰性例である13例を対象として、次世代シークエンサーを用いた下記のスクリーニングを施行した。1)CASKの全領域と既知の小頭症・小脳脳幹部低形成の疾患原因遺伝子19種類をターゲットとしたターゲットリシークエンス。現在のところ疾患原因につながる変異は見いだされていない。 2)1)の陰性症例に対する、患児・両親のトリオを対象とした全エクソンシークエンス。新学術領域「ゲノム支援」の支援の下で施行し、現在データ解析中である。 2.【目標】MICPCHの疾患原因遺伝子候補であるHDAC2の機能解析。 【進捗】神経由来のセルラインを用いて、HDAC2ならびに隣接するMARCKSのハプロ不全が正常な中枢神経発達を阻害する可能性をin vitroにて検証している。本件ではsiRNAによる安定した発現抑制系が構築できており、現在では神経軸索伸張の評価を行っている。 3.【目標】新規症例の収集とgenotype/phenotype情報の集積。 【進捗】平成25年度には新規6症例を収集解析した。また、両親サンプルの収集藻へ移行して行い、累積で13症例の両親サンプルを併せて解析している。
|
Strategy for Future Research Activity |
1.これまでに収集解析してきたMICPCHの典型例40例、非典型例3例の解析を終了し、いずれに置いても疾患原因を明らかにする。次世代シークエンサーを用いた解析により新規疾患原因遺伝子候補が見いだされた場合は、神経細胞由来セルラインを用いた発現抑制系における表現型の評価、モデルマウスを用いた胎生期の発現パターン、ノックアウトマウスにおける表現型の評価などを通じ、当該遺伝子とMICPCHとの関連を明らかにする。また、MICPCHの未診断例におけるスクリーニングを行う。 2.HDAC2ならびに隣接するMARCKSのハプロ不全の機能評価をin vitroにおいて終了し、有意な結果が得られた場合にはノックアウトマウスの作製を行い、本遺伝子とMICPCHとの関連を明らかにする。 3.新規症例ならびに両親サンプルの収集は継続して行い、genotype/phenotype情報を蓄積するとともに、予後予測や療育方針などを通じて臨床に還元する。 4.上記の成果を論文化する。また、新規疾患概念であることに鑑み、公開可能な情報をインターネット上で公開し、臨床医や患者への便益を図る。
|
-
[Journal Article] Genetic Variants in C5 and Poor Response to Eculizumab in PNH.2013
Author(s)
Nishimura J, Yamamoto M, Hayashi S, Ohyashiki K, Ando K, Brodsky AL, Noji H, Kitamura K, Eto T, Takahashi T, Masuko M, Matsumoto T, Wano Y, Shichishima T, Shibayama H, Hase M, Li L, Johnson K, Lazarowski A, Tamburini P, Inazawa J, Kinoshita T, Kanakura Y.
-
Journal Title
N Eng J Med.
Volume: 370
Pages: 632-639
DOI
Peer Reviewed
-
-
-