2013 Fiscal Year Research-status Report
Piwiの機能解析を通じたショウジョウバエレトロトランスポゾン発現抑制機構の解明
Project/Area Number |
25830144
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
大谷 仁志 慶應義塾大学, 医学部, 特任助教 (10627087)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ショウジョウバエ / Piwi / DmGTSF1 / piRNA / レトロトランスポソン / ヘテロクロマチン / 転写制御 / 不妊 |
Research Abstract |
レトロトランスポゾンは多くの生物種のゲノムに散在する転移因子であり、コピー&ペースト方式による転移が、ホストの遺伝情報に重大な損傷をもたらすことが知られている。そのため、細胞内にはレトロトランスポゾンの発現を特異的に抑制する機構が備わっていると考えられる。近年の生化学的、遺伝学的解析により、レトロトランスポゾンの発現抑制が細胞の核内で行われていることと、Argonauteファミリータンパク質であるPiwiが、その抑制機構の中核を担うことが明らかとされてきた。しかしながら、その詳細な分子機構は未だ不明である。その要因の一つとして、Piwiと供に核内で働くパートナー因子の同定がなされていないことが挙げられる。我々は、ショウジョウバエ生殖組織の体細胞由来培養細胞株(OSC)を用い、RNAiをベースとした遺伝子スクリーニング法を行うことにより、核特異的に局在するタンパク質CG3893が、レトロトランスポゾンの発現抑制に必須の因子であることを見出し、さらに生化学的解析を行うことにより、核内でPiwiと直接的に相互作用することを明らかにした。CG3893は機能未知のタンパク質であるが、クロマチン免疫沈降法による解析から、CG3893はPiwiと同様に、ヘテロクロマチン形成を介した転写制御によりレトロトランスポゾンの発現を抑制していることが判明した。以上の解析結果から、CG3893をDmGTSF1と命名し、Piwiの新たな核内パートナー因子として、論文にまとめ報告した。Piwi 及びDmGTSF1の機能的欠失が不妊の症状を誘引することが判明しているため、本研究成果は不妊の病態形成機構の解明、ひいては新たな治療法の開発へと繋がる可能性を持っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ショウジョウバエにおいて、DmGTSF1はPiwiと直接的に相互作用する、核内パートナー因子であり、レトロトランスポゾンの発現抑制に必須の因子であることを報告した。さらに、DmGTSF1によるレトロトランスポゾンの発現抑制機構は、ヘテロクロマチン形成を介した転写制御であることも明らかにした。これらの研究成果は、本研究における、レトロトランスポゾン抑制機構の解明という目的に対し、新たな知見を加えるものとなったと考えるため、おおむね順調に進展していると評価した。しかしながら、DmGTSF1の機能は、未だ不明であることから、さらなる解析が必要となる。
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Strategy for Future Research Activity |
DmGTSF1は機能未知のタンパク質であるが、RNA結合に関与すると考えられているZinc fingerドメインを持っており、その変異体はレトロトランスポゾンの発現を抑制できない事が明らかになっている。従って、DmGTSF1に対する結合RNAの同定は、DmGTSF1の機能を探る上で有用な情報となり得ると期待される。そこで、効率よく結合RNAを得るため、まずはDmGTSF1に対するモノクローナル抗体の作製を行う。作製された抗体を用いて、結合RNAを同定する実験手法であるhigh-throughput RNA sequencing of cross-linked immunoprecipitation (HITS-CLIP)を行うことで配列の決定を目指す。
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