2016 Fiscal Year Annual Research Report
Studies on life history of endangered wetland ground beetles (Carabidae)
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25830150
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
笹川 幸治 千葉大学, 教育学部, 助教 (30647962)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 絶滅危惧種 |
Outline of Annual Research Achievements |
2012年の環境省のレッドリストの見直しにおいて、多くの昆虫類が新たに絶滅の危機に瀕していることが明らかにされた。湿地性ゴミムシ類はその一つであり、このグループの保全に寄与する可能性のある基礎データの収集が本研究の大きな目的である。湿地性ゴミムシ類のサンプリング地としては、多くの絶滅危惧種が生息することで知られる渡良瀬遊水地を選んだ。 基礎的な生活史を明らかにすることを目的に、多くの湿地性種の飼育を試みた。これらのうち、ワタラセハンミョウモドキ、コハンミョウモドキ、トネガワナガゴミムシ、カジムラヒメナガゴミムシについては野外捕獲した繁殖成虫から得た卵を、室内飼育条件下で成虫まで飼育することに成功した。いずれの種も、非湿地性種の多くが産卵時に土中に形成する卵室を作らず、泥内に直接産卵することが観察された。トナガワナガゴミムシとカジムラヒメナガゴミムシについては羽化成虫の越冬・越冬後の繁殖も成功し、累代飼育が可能な条件を明らかにした。幼虫食性については、コハンミョウモドキがミミズ食であることが確認され、この食性が本種の希少性と関わっている可能性が示唆された。他3種は昆虫幼虫食であり、湿地に特異的な幼虫食性は持たないことが示唆された。 また、重要な生活史形質の一つである幼虫食性について、口器形態からの推定法の確立を試みた。湿地性ゴミムシを含むオサムシ科複数種の幼虫大顎の幾何学的形態測定の解析結果と、幼虫食性の関連性を調べたところ、両者に強い関連性が確認された。幼虫食性が未知であったエゾナガゴミムシを対象に、幼虫飼育による推定結果と口器の形態測定による推定結果を比較したところ、両者は一致した。ゆえにこの手法は、湿地性ゴミムシを含む幼虫食性が未知の種について、形態から食性を推定する方法として有効であると考えられた。
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