2013 Fiscal Year Research-status Report
種間比較に基づく大型ゲンゴロウ類の生態の解明と保全
Project/Area Number |
25830152
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
大庭 伸也 長崎大学, 教育学部, 准教授 (20638481)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 絶滅危惧種 / 水生甲虫 / 生活史 / 集団遺伝構造 |
Research Abstract |
大型ゲンゴロウ類は全国的に減少が著しく、最新版のレッドリスト(環境省、2012)において、ゲンゴロウは準絶滅危惧から絶滅危惧II類に、クロゲンゴロウは新たに準絶滅危惧種に指定されるなど、ランクの上方修正がなされている。本研究の目的は、個体数を減らしている大型ゲンゴロウ類が多い中で、大型ゲンゴロウの一種・コガタノゲンゴロウが、近年増加していることに着目し、大型ゲンゴロウ類の基礎生態と減少要因を包括的に解明することである。1年目は、生活史の基礎データを得る目的で、発育ゼロ点と飛翔頻度の比較分析を行った。 羽化率と発育ゼロ点を調査するため、異なる温度条件下(20,25,28℃)で孵化幼虫~羽化まで飼育した。その結果、ゲンゴロウでは20、25、28℃の順に、67、70、100%、クロゲンゴロウでは49%、68%、82%と温度上昇と共に羽化率の向上が認められた。一方、コガタノゲンゴロウでは、6%、50%、47%となり、総じて前2種よりも羽化率が低いこと、20度ではほとんど羽化に至らないことが判明した。また、幼虫期は比較的低温でも成長可能であるが、蛹~羽化には更なる温度が必要であることが示唆された。サンプルサイズが不十分ではあるが、現時点で幼虫期間のみの発育ゼロ点を算出すると、ゲンゴロウ、クロゲンゴロウ、コガタノゲンゴロウの順に温度が上がることが分かった。冬季に10度程度で成虫を維持した場合、コガタノゲンゴロウの死亡率が最も高かった。野外調査でも冬季にコガタノゲンゴロウの死亡個体を確認したことから、本種は低温に弱いことが分かった。 続いて、羽化後24時間以内の飛翔頻度を比較したところ、ゲンゴロウ=コガタノゲンゴロウ>クロゲンゴロウとなり、コガタノゲンゴロウが最も飛翔頻度高いわけではなかった。また、コガタノゲンゴロウではメスよりもオスで有意に高い飛翔頻度を示すことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目に計画していた調査・実験の8割程度の項目は達成できた。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目は、1年目の調査だけでは解明できなかった増殖能力の解明に加え、発育ゼロ点のデータを補完する目的で、28度よりも高い温度で飼育する。また、室内行動実験の追加と野外調査を継続する予定である。それぞれの種の地域個体群ごとの集団遺伝構造の解析にも着手する。
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Research Products
(1 results)