2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25830154
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
片山 直樹 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境変動研究センター 生物多様性研究領域, 研究員 (10631054)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 生物多様性 / 農法 / 水田 / 環境保全型農業 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、生物多様性に環境保全型農業がもたらす影響を明らかにするとともに、収量とのトレードオフ関係を解明することである。今年度は、過去三年間に全国6地域で得られた水田の生物・農法データを用いて、生物多様性および収量に環境保全型農法(有機農法・特別栽培農法)がもたらす影響を明らかにした。PoissonまたはZero-inflated poisson (negative-binomial) modelsを用いて解析した結果、有機農法は慣行農法と比較して、植物、クモ、ダルマガエル、ドジョウなど多くの分類群の種数・個体数が高いことが明らかになった。一方、特別栽培にはそのような効果はみられなかった。また収量は有機、特別栽培、慣行の順に高くなる傾向がみられ、生物多様性との間にトレードオフ関係が存在することがわかった。次に、有機農法が生物多様性を高める仕組みを明らかにするため、農薬など各種農法の影響を調べた。同様の統計モデルを用いた結果、植物には本田除草剤、クモには箱剤、ダルマガエルには畦畔の草丈、ドジョウには輪作の実施、というように生物グループによって異なる農法から影響を受けていることが明らかになった。現在は、各生物グループの種数・個体数と収量の関係を解析し、その結果をとりまとめて、論文化を進めている。これらの結果は、現行の環境保全型農業の認証基準を改良するうえでも有用な知見となるだろう。 また、果樹園の鳥類と農法の関係を調べた。まず青森県内のりんご園では、有機農法は慣行農法と比較して、鳥類の種数および昆虫食者の個体数が多いことを明らかにした(Scientific Reports)。次にアルジェリアのオリーブ園では、共同研究によって粗放農法が集約農法より鳥類の種数・個体数が多いことを示した(Ornithological Science)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね当初の予定に近いペースで、順調に解析結果が出ているため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は解析結果をまとめ、論文化を迅速に進める。
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Causes of Carryover |
当初の予定よりもさらに興味深い研究成果が得られ、解析手法の追加が必要となったことから成果のとりまとめと学会発表を見送った。このため、成果発表等に要する経費が次年度使用額となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究成果発表のため、論文化の英文校閲費、出版の際のオープンアクセス費、国内外での学会発表のための旅費、成果物の印刷費用として使用する予定である。
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