2013 Fiscal Year Research-status Report
細胞外環境の変化によって起こる核小体へのシグナル伝達機構の解析
Project/Area Number |
25840011
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Takasaki University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
田中 祐司 高崎健康福祉大学, 薬学部, 助教 (90453422)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | JmjC / 飢餓 / rRNA転写調節 / ヒストン脱メチル化 / KDM2A / エピジェネティクス / シグナル伝達 |
Research Abstract |
以前までの解析から、細胞外環境の変化を核小体クロマチンに伝えるシグナル伝達の存在、及びそれによるKDM2A活性制御の存在が示唆されていた。本研究ではヒストン脱メチル化酵素KDM2Aの活性制御機構を明らかにし、細胞外環境の変化を核小体クロマチンへ伝えるシグナル伝達の分子機構を明らかにする事を目標とし、研究を開始した。 まず飢餓細胞でKDM2Aがどのシグナル経路で制御されるかを解析した。始めにシグナル経路阻害剤がKDM2A依存的なrRNA転写抑制を調節するかをKDM2A発現抑制細胞への処理とRT-PCR法で検討した。その結果、PI3Kシグナル経路阻害剤のLy294003と、解糖系阻害作用を発揮する2-デオキシグルコース(2-DG)処理が、KDM2A依存的なrRNA転写抑制を誘導した。この結果から、KDM2Aは、PI3K経路と細胞内エネルギー量低下で活性化するAMPK経路で調節される可能性が考えられた。 その後、特にAMPK経路によるKDM2A制御の可能性を解析した。まず、2DGによりAMPKが活性化するかを検討した所、活性化AMPK、及び下流因子の一つACCのリン酸化が検出された為、この2DG処理条件でAMPK活性化が生じると考えられた。さらにAMPK阻害剤であるCompound C処理やAMPK-alphaの発現抑制によって、2DG処理によるrRNA転写抑制は阻害された。従って、2DGによるrRNA転写抑制にはAMPK依存性があると考えられた。さらにAMPK活性化剤のAICARはrRNA転写を抑制したが、この現象はKDM2A発現抑制細胞では緩和されたため、AMPKによるrRNA転写抑制にはKDM2A依存性がある事が明らかとなった。以上の結果から、2DGによるrRNA転写抑制を行うシグナル経路の一つにAMPKとKDM2Aを経由する経路が存在する事が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画案は当初3つの段階を構成した。それは、①飢餓時にKDM2Aがどのシグナル経路で制御されるか。②KDM2Aが飢餓シグナルをどのように受け取り、ヒストン脱メチル化活性を発揮するのか、③シグナル経路で調節される他の因子の同定、及び協調的な転写調節機構の解析。である。現在までに、①の部分について、少なくともAMPKを介した経路でKDM2A依存的なrRNA転写抑制が発揮される事が明らかとなってきた。その為、計画の1/3程度を達成できたと考えている。本研究は3年かけて行う予定であり概ね順調と考えた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究計画案の3段階の構成(①飢餓時にKDM2Aがどのシグナル経路で制御されるか。②KDM2Aが飢餓シグナルをどのように受け取り、ヒストン脱メチル化活性を発揮するのか、③シグナル経路で調節される他の因子の同定、及び協調的な転写調節機構の解析。)のうち、この後、AMPK依存的なシグナルがどの様にKDM2Aを制御するかを解析していく事で②を、活性化KDM2Aが脱メチル化をした際にrDNA上で何が起こっているのかを解析する事で、③を明らかにしていきたい。ただし、②、③については実験的に困難な部分を伴う為、柔軟に対応したい。それまでは、計画通りに研究を推進していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究計画では、今年度の予算は、遠心機購入及び、消耗品に充てる事を予定していた。計画当初は、研究遂行に当たり、遠心機が古かった事と機器不足に陥る事が予測されたため、購入を計画していた。しかし、該当年度には研究推進に問題が生じなかった事と、来年度の計画で消耗品を多数購入し予定していた予算を超過する可能性があると判断し購入を延期した。その為、次年度使用額が生じた。 研究推進に問題がないか勘案し、初年度に計画していた遠心機を購入するか判断する。本年度の研究推進に当たり、消耗品を多量に購入しなければならない可能性がある為、消耗品費が不足した場合は消耗品費に充てる事としたい。
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