2013 Fiscal Year Research-status Report
PARP阻害剤によるDNAメチル化異常の解析:PARP阻害=メチル化亢進なのか?
Project/Area Number |
25840015
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
藤森 浩彰 独立行政法人国立がん研究センター, 研究所, 研究員 (00590043)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | PARP / Dnmt3 / DNAメチル化 |
Research Abstract |
PARP familyは16種類の構成因子から成るが、細胞内PARP活性の80%はPARP-1に起因すると考えられている。どのfamily memberの阻害がDnmt3の減少に必要なのかを検討するため、Parp-1欠損マウスES細胞 (Parp-1 -/- ESCs)が同様の表現形を示すか検討した。2つの独立したParp-1 -/- ESCsは共にDnmt3a2の発現低下を示し、一つのParp-1 -/- ESCsがDnmt3bの発現低下を示した。Parp-1欠損によりDnmt3が減少していた場合、PARP阻害剤処理は更なる発現低下を誘導しなかった。これらの結果は、PARP阻害剤処理は、Parp-1の活性を阻害することでDnmt3の発現低下が誘導されることを示唆している。 さらにParp-1のDnmt3転写への関与は、直接的なのか間接的なものかDnmt3a2, 3b promoter領域を標的としたChIP assayにより検討した。Parp-1及び PAR抗体を用いてChIPを行った結果、PARP阻害剤処理は、Dnmt3a2, 3b promoterの転写因子Sp1結合領域に対するParp-1結合とPAR修飾レベルを大きく低下させた。Sp1は既存の報告においてParp-1によりPAR修飾を受けることが示されているため、これらの結果は、PARP阻害剤処理により、Dnmt3の転写に必要な転写因子の活性化が阻害され、Dnmt3の発現低下が誘導されている可能性が考えられた。 マウス生体においても、PARP阻害剤投与は精巣においてDnmt3a2, Dnmt3bの発現を低下させた。さらに、Dnmt3欠損は精子形成マーカーを低下させるという過去の報告と一致して、PARP阻害剤投与マウスの精巣では、精子形成マーカーの発現が低下していた。一方、切片像では大きな形態学的異常は観察されなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画における平成25年度の目標は、Dnmt3の発現調節にPARPが直接的に関与するのか、間接的に関与するのか決定し、さらにPARP阻害剤処理下でDNAメチル化が領域特異的に亢進・減少することの機構解明を進めることであった。 平成25年度における我々の研究進行状況は、PARP阻害剤処理下でDnmt3が低下する現象の機構として、(1)PARP阻害剤処理下でのDnmt3低下には、Parp-1の阻害が重要であること、(2)Dnmt3a2, Dnmt3bの発現調節において、Parp-1やPAR修飾がDnmt3 promoterに対して直接的に関与し得ること を示した。PARP阻害剤処理下でDNAメチル化が領域特異的に亢進・減少することの機構解明においては、現時点でpositiveなdataを得られていないが、一方、平成26年度以降に遂行する予定であったマウス生体を用いた研究において、PARP阻害剤処理下でのDnmt3減少及び生殖細胞マーカーへの減少を見い出しており、総合的には予定通りの達成度であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、研究遂行を妨げる問題は存在しないため、引き続き研究計画に従って、PARP阻害剤によるDNA脱メチル化の機構および付随する細胞表現形を明らかにしていく。 さらに、DNMT3の過剰発現は肺がん等 一部のがんにおいて、その進行に極めて重要な役割を果たしており、がん治療の標的となり得ることが報告されている。一方、現在までにDNMT3に対する有用な阻害剤は存在しない。そこでDNMT3を高発現するヒトがん細胞株を用いて、PARP阻害剤がDNMT3低下を介して抗がん作用を誘導できるか、応用面での可能性の検討も進めていく。 具体的には、(1) DNMT3を高発現するヒトがん細胞株において、PARP阻害剤処理はDNMT3の低下を誘導するか (2) DNMT3依存的にがん細胞で不活性化している癌抑制遺伝子の発現が、PARP阻害剤処理下でエピジェネティックに回復するか (3) PARP阻害剤処理によりがん細胞で誘導される細胞死は、DNMT3b低下を要因とするか 等を検討していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
支出可能額が請求額に満たず、申請時に予定していた備品購入を一時保留したため、次年度使用額が生じた。 研究申請時、研究が予定通りに進行しない状況を考え、様々な追加実験用の資金の必要性を考えていたが、現時点での研究進行状態から鑑み、予定していた備品購入が研究費収支上可能であると考えられるので、次年度使用額は当初の予定通り備品購入資金に充当する。
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