2014 Fiscal Year Research-status Report
真核生物における小分子RNA作用機序の構造基盤の解明
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25840019
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
三好 智博 新潟大学, 研究推進機構 超域学術院, 助教 (60534550)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | RNAサイレンシング / X線結晶構造解析 / 小分子核酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
真核生物のRNAサイレンシングメカニズムは、約20塩基長の小分子RNAが関与する塩基配列特異的な遺伝子発現制御機構であり、数多くの高次生命現象に関わる必要不可欠な生体メカニズムである。小分子RNAがトリガーとなる本機構は、新たな核酸創薬を担うシステムとして期待されているだけではなく、がん治療や再生医療の分野での応用が待ち望まれている。しかし、このメカニズムの詳細は不明な点が数多くあり、原子分解能レベルでの構造基盤の解明が必要である。特に本研究では、この機構の中枢を担うタンパク質群による小分子RNAを介した「連続的な一連のメカニズムの詳細」についてX線結晶構造解析を用いて解明する。 RNAサイレンシング機構は、小分子RNAとタンパク質の協調的相互作用が非常に重要な生体システムである。また、その作用様式は、小分子RNA特有の結合・認識メカニズムを形成していると考えられる。本研究では、小分子RNA作用機構において機能の中枢を担うタンパク質による多段階からなる小分子RNA認識メカニズムの立体構造を決定することにより、一連の連続的な分子動態メカニズムを解明する予定である。 研究手順は、大まかに(1)小分子RNA-タンパク質複合体の結晶化、(2)X線回析データの収集、(3)立体構造計算(4)生化学的実験による構造モデルの検証を予定しており、平成25年度までに、(1)小分子RNA-タンパク質複合体の結晶化を完了しており、平成26年度では、(2)X線回析データの収集と(3)立体構造計算を完了することに成功した。現在は、(4)生化学的解析により、タンパク質複合体の分子動態メカニズムの詳細を解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該研究の大まかな手順は、(1)小分子RNA-タンパク質複合体を結晶化させ、(2)X線回析データの収集を行い、その後の(3)立体構造計算により複合体の立体構造を決定する。さらに(4)この示された立体構造モデルの情報を基に生化学的実験による分子動態メカニズムを明らかにしていく計画である。平成25年度までに様々なタンパク質と核酸の複合体の結晶化を行うことで、良質な結晶を得る複合体を見つけることに成功した。平成26年度では、この作成した結晶を用いて、X線回析データを取得し、構造計算を進めたが、既知構造データを用いた分子置換法では、この構造の位相を決定することは、出来なかった。そのため、セレノメチオニンで標識を行ったタンパク質を用いる方法で、位相の決定を行った。この位相決定実験では、高エネルギー加速器研究機構において、X線回析データを取得した。得られた解析データをもとに、立体構造を決定し、複合体構造の全貌を原子レベルの分解能で観察することに成功した。以上の結果より、上記(1)~(3)を完了して、現在(4)を遂行中であることから、「おおむね順調に進展している」と評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
前述した研究手順(1)~(4)のうち、平成25、26年度において(1)~(3)を完了したことから、平成27年度は(4)を遂行していく予定である。平成26年度の研究で明らかになったタンパク質複合体の立体構造をもとに、様々な種類と長さの核酸との結合様式を調べる。さらに、タンパク質の核酸相互作用アミノ酸に着目して、変異体を作製し、各々の変異体タンパク質の核酸相互作用に関して解析を行なう予定である。
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Causes of Carryover |
本研究の大まかな研究手順は、(1)小分子RNA-タンパク質複合体の結晶化、(2)X線回析データの収集、(3)立体構造計算(4)生化学的実験による構造モデルの検証を予定している。平成26年度の研究では、主に上記の実験計画(2)X線回析データの収集と(3)立体構造計算を行った。これらの研究では、X線回析データの取得は、大学の設備及び、高エネルギー加速器研究機構で予想よりスムーズに遂行出来たため、当初予定していた所要額より減少した。さらに、(4)のX線回析データを用いた構造計算は、新たに計算機器やソフトウェアを購入する必要が無かったため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当研究で最も支出額が大きいと考えられるものが、平成27年度に行う上記の研究計画(4)生化学的実験による構造モデルの検証、である。この研究では、数多くのランニングコストの高い解析機器を用いて実験を進める予定であり、サンプル調製(アイソトープ標識・蛍光標識)やその解析過程で使用する消耗品で膨大な支出が膨らむと予想している。同時に、これまでの研究成果を発表するための英文校閲料や投稿・掲載料、さらに国内外の学会発表に関わる旅費等が必要だと考えている。
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