2014 Fiscal Year Research-status Report
ヘムオキシゲナーゼと弱い相互作用を示す複合体の立体構造解析
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25840026
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
杉島 正一 久留米大学, 医学部, 准教授 (30379292)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 電子伝達 / 分子間相互作用 / X線結晶構造解析 / 酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヘムオキシゲナーゼ(HO)は、分子状酸素とNADPH-シトクロムP450還元酵素(CPR)からの還元力を利用し、ヘムをα-ビリベルジン、一酸化炭素、鉄に分解する酵素である。本研究ではCPR-HO複合体もしくはCPRの各ドメインとHOの複合体の立体構造解析を行い、CPRとHOの相互作用の詳細およびCPRからHOへの電子伝達経路について明らかにすることを目的とした。
現在までに、CPR-HO複合体を変異CPR(ΔTGEE)を用いることで安定化し、低分解能ながらX線結晶構造解析に成功した。ΔTGEE-HO複合体中で電子はNADPH→FAD→FMN→ヘムと伝達されると推定しているが、FADとFMNは20Å以上離れており、FAD→FMNの直接の電子伝達は難しい位置関係にあった。実際にΔTGEEからヘム-HO複合体への電子伝達速度は野生型CPRを用いた場合の1/250程度であり、非常に遅くなっていた。 これまでの海外の研究グループ(米ウィスコンシン大 Kim博士)らの報告では、CPRはopenとclosedの二つ以上のコンフォメーションを行き来しながら電子伝達を行うことが推定されている。ΔTGEEはopenコンフォメーションが安定化された変異CPRであり、このことと我々の決定した立体構造を合わせて考えると、openコンフォメーションはHOに結合するのに都合が良く、結合すると、FMNとヘムが近接するので、CPR-HO間の分子間電子伝達に都合の良い形、closedコンフォメーションはFMNとFADが近接しているので、CPR内部の分子内電子伝達に都合の良い形と考えることができる。CPRはこの二つのコンフォメーションを行き来することで、HOなどにうまく電子伝達を行っていると推定できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の目的であるCPR-HO複合体の構造解析に成功した。ただし、低分解能であるため、アミノ酸側鎖の構造や結合水には不明瞭な点が多く、そのレベルでのCPR-HO間の相互作用に関する議論はできない。詳細を明らかにするためには、分解能の向上が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
1.複合体結晶の分解能向上 複合体の精製度向上、分子間パッキングの改良、新たな結晶化条件の探索などにより、分解能の向上を図る。
2.closedコンフォメーションのCPRとHOの相互作用 現在考えている電子伝達モデルでは、closedコンフォメーションのCPRとHOは必ずしも相互作用する必要はない。実際に相互作用するかどうか、表面プラズモン共鳴法や超遠心分析によって明らかにする。これについてはclosedコンフォメーションのCPRを使った活性測定や還元速度測定も予定している。
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Causes of Carryover |
前年度未使用額と合わせて、概ね交付決定額通りに使用している。 残額で購入可能な試薬・消耗品で、研究遂行に必要な物品がなかったため、次年度に交付予定の予算と合わせることで、有効活用することにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は交付予定額と合算した上で、試薬・消耗品の購入に当てる。
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Remarks |
平成27年度科学技術分野の文部科学大臣表彰 若手科学者賞受賞
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Research Products
(20 results)
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[Journal Article] Insights into the Proton Transfer Mechanism of a Bilin Reductase PcyA Following Neutron Crystallography2015
Author(s)
Masaki Unno, Kumiko Ishikawa-Suto, Katsuhiro Kusaka, Taro Tamada, Yoshinori Hagiwara, Masakazu Sugishima, Kei Wada, Taro Yamada, Katsuaki Tomoyori, Takaaki Hosoya, Ichiro Tanaka, Nobuo Niimura, Ryota Kuroki, Koji Inaka, Makiko Ishihara, Keiichi Fukuyama
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Journal Title
Journal of the American Chemical Society
Volume: 137
Pages: 5452-5460
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] X 線結晶構造解析によるヘム代謝酵素複合体の立体構造解明2014
Author(s)
杉島正一, 佐藤秀明, 東元祐一郎, 原田二朗, 平 順一, 坂本 寛, 安永卓生, 和田 啓, 福山恵一, 山本 健, 野口正人
Organizer
立体視プロジェクションシステムを使った分子科学研究講演会
Place of Presentation
九州工業大学飯塚キャンパス(福岡県飯塚市)
Year and Date
2014-12-05 – 2014-12-06
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[Presentation] Neutron Structure of Phycocyanobilin:oxidoreductase Complexed with Biliverdin2014
Author(s)
Masaki Unno, Kumiko Ishikawa-Suto, Katsuhiro Kusaka, Taro Tamada, Yoshinori Hagiwara, Masakazu Sugishima, Kei Wada, Taro Yamada, Makiko Ishihara, Keiichi Fukuyama
Organizer
23rd congress and general assembly of the international union of crystallography
Place of Presentation
Palais des Congres de Montreal (Montreal, Quebec, Canada)
Year and Date
2014-08-05 – 2014-08-12
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