2014 Fiscal Year Research-status Report
細胞内局在特異的なIKKβを介したネクローシスの制御と炎症と発がんの連関
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25840035
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
土谷 佳弘 広島大学, 医歯薬保健学研究院, 助教 (90611301)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 肝線維化 / 肝がん / IKK |
Outline of Annual Research Achievements |
目的 NF-κBは炎症や細胞の生と死を制御する転写因子である。TNFαは細胞質のIKKβを介してNF-κBを活性化するが、細胞内ストレスによるNF-κBの活性化には核内IKKβが関与することを我々は明らかにしてきた。本研究では核内IKKβを介した細胞死の制御と炎症と発がんへの関与を解明する。
結果 キナーゼ活性非依存的な核内IKKβの炎症と発がんにおける役割を解明するために、核移行シグナル(NLS)を付加したキナーゼ活性化欠損型遺伝子(NLS-IKKβKN)をIKKβf/fマウスの受精卵に導入してトランスジェニックマウス(Tg-NLS-IKKβKN IKKβf/f)を作成した。このマウスをCre発現マウス(Alb-cre)と交配して肝細胞特異的に内在性IKKβ遺伝子を欠失させたマウス(Tg-NLS-IKKβKN IKKβΔhep)を作成したところ、出生直後から肝小葉における広汎なネクローシスと細胆管反応が進行し、持続的な炎症細胞の浸潤に伴った線維組織の進展により重篤な肝硬変の病態を呈した。さらにこのマウスに対してジエチルニトロサミン(DEN)投与によるHCC誘発モデル実験を行った。驚くべきことに肝細胞特異的IKKβ遺伝子欠損マウス(IKKβΔhep)では高頻度にHCCが発生するのに対して、Tg-NLS-IKKβKN IKKβΔhepマウスでは顕著に減少していた。この遺伝子改変マウスでは肝線維化とHCCが逆相関することが判明した。このような表現型を示すマウスはこれまでに報告されておらず、核内IKKβ情報伝達系を軸とした解析により肝線維化とHCCの連関に重要な知見をもたらすと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
一部の遺伝子改変トランスジェニックマウスの準備が遅延したため肝発がん発症の解析に遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
我々が開発したTg-NLS-IKKβKN IKKβΔhepマウスは、出生直後からの肝臓のネクローシスと肝線維化の進展にもかかわらず、HCC発症が抑制されるというユニークな表現型を示すマウスである。これまでにメチオニン・コリン欠乏食(MCD)、胆管結紮(BDL)、四塩化炭素(CCl4)投与、Mdr2遺伝子欠損マウス(Mdr2-/-)などの肝線維化のモデル実験系が開発されてきた。いずれも数ヶ月を経て線維化が進行してHCCが亢進されるモデル系である。Tg-NLS-IKKβKN IKKβΔhepマウスは従来のモデル系とは線維化の進行過程に違いがみられ、さらにHCCが抑制される点で大きく異なる。従来のモデル系では解明されてこなかった肝線維化とHCCの分子機構が、今後の研究で明らかにされることが期待される。
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Causes of Carryover |
IKK遺伝子改変トランスジェニックマウスを用いた化学誘導肝発がんの解析において、一部のマウスで肝発がんの発症が現段階で認めておらず当該年度の実験に必要となるすべてのマウスを確保することができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
このため次年度に、経過観察を延長することで肝発がんを発症したマウスが得られ、当初計画していた遺伝子発現解析を行うこととし、未使用額はその経費に充てることとする。
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