2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25840038
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
横田 直人 首都大学東京, 理工学研究科, 助教 (40610564)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | BAG6 / 凝集体 / 核内凝集体 |
Research Abstract |
不良タンパク質の代謝は,細胞の恒常性維持に不可欠である.特に増殖が頻繁におこらない神経細胞等においては,凝集体の悪影響は非常に強く現れ,アルツハイマー病や,ハンチントン病などの神経変性疾患の原因となることが知られている.これらの凝集体の形成過程におけるBAG6複合体の役割,ならびに核内凝集体形成がどのように防がれているかを明らかにすることを目的に,当初の計画に沿って研究を行った. <1> BAG6遺伝子ノックアウト細胞やノックアウトマウスを作出するために,人工遺伝子TALENの作製を試みた.しかし,標的配列を組み込んだプラスミドに対する切断活性の高いTALEN遺伝子産物を得ることが出来なかった.そこで,CRISPR-CAS系を用いて,ゲノム編集を行う方針へ変更した.現在,標的配列を組み込んだプラスミドに対して高い切断活性を示すgRNAを発現するベクターの作製まで完了している.また,遺伝子破壊が引き起こされた細胞をスクリーニングするためのターゲティングベクターの作製も行った. <2> BAG6と複合体を形成するタンパク質の網羅的同定のために,各種BAG6変異体の作製した.現在,免疫沈降を行うために必要な発現ベクターの作製まで完了した.今後は,これらのコンストラクトを用いて免疫沈降を行い,LC-MS/MSを用いて相互作用しているタンパク質の網羅的同定を試みる. <3> BAG6と相互作用する関連遺伝子をノックダウンした際に,凝集体の形成に影響が見られるか否かフィルタートラップアッセイを用いて検討した.本実験ではコントロールと有意な差は認められなかった.他の評価法を用いることで影響がみられる可能性が考えられたため,蛍光顕微鏡撮影像や,FACSを利用した核内凝集体の細胞死への影響の有無について検討している.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画に沿って研究を進めたが,当初下記2項目において著しい成果が得られなかった. 1. TALENを用いた遺伝子破壊 2. BAG6関連遺伝子ノックダウンによる核内凝集体形成における影響の評価. しかし,項目1に関しては,CRISPR-CASをもちいた系に切り替えることで,当初の計画に順ずる成果を達成することができた.また,項目2に関しては,実験の成功は確認されたが,ノックダウンを行った細胞と,コントロール細胞との間に有意な差が得られなかった.Neuro2A細胞を用いた先行研究では,BAG6複合体が凝集体形成に関与することが示されている.そこで,現在同細胞種を用いた研究も進めている.他の評価法を用いることで影響がみられる可能性が考えられたため,蛍光顕微鏡撮影像や,FACSを利用し,凝集体の大きさや,核内凝集体が形成される条件下の細胞の生死に対して,関連遺伝子のノックダウンが影響を与えるか否か検討している.LC-MS/MSを用いた核内BAG6複合体構成因子の網羅的同定では,実験を行うために必要な発現ベクターの作製並びに条件検討が完了した.
|
Strategy for Future Research Activity |
基本的に平成25年度の計画を継続して行うことを計画する.特に,核内におけるBAG6複合体構成因子の同定を第一に行うことを予定している.さらに,ノックダウンでは,対象遺伝子の影響を完全に失わせることが難しいので,現在並行して行っているCRISPR-CASの系を積極的に利用し,ノックアウト細胞を作出し,ポリグルタミン凝集体形成への影響の有無を改めて検討する.また,不良タンパク質代謝に大きな役割を果たしているオートファジーと,BAG6複合体の関連も視野に研究を進めることを計画している. 個体レベルでの解析では,マウスをもちいたノックアウト生物作製が最終目標であるが,研究期間を考慮し,並行して世代時間の短いショウジョウバエをもちいたノックアウト生物の作出も計画している.ショウジョウバエでもポリグルタミン凝集体を形成する疾患モデル生物が存在するため,それらとBAG6ノックアウト生物を交配することで,個体レベルでのBAG6とポリグルタミン病の関連性が解明できると考えられる. 既知のBAG6相互作用因子であるTRC35は,BAG6の核内輸送の制御への関与が示唆されている.そこで,平成26年度は本遺伝子にも着目し,BAG6の細胞内局在と核内凝集体代謝機能の関連性についても着目し研究を進めていくことを計画する.
|