2013 Fiscal Year Research-status Report
新規輸送キャリアーによるゴルジ体から細胞膜へのタンパク質輸送機構の解明
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25840042
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
若菜 裕一 東京薬科大学, 生命科学部, 助教 (90635187)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | キネシン / 小胞輸送 / ゴルジ体 / 細胞膜 / 輸送キャリアー / 細胞分裂 / 微小管 |
Research Abstract |
小胞体で合成されたタンパク質はCOPII小胞によりゴルジ体へと輸送される。トランスゴルジ網(TGN)において積み荷タンパク質は選別され様々な輸送キャリアー(COPI小胞、クラスリン小胞など)に搭載されてそれぞれの最終目的地(細胞膜、エンドソーム/リソソーム、小胞体など)へ輸送される。TGNにおける積み荷選別および輸送キャリアーの配送の分子メカニズムの解明は、小胞輸送研究における重要な課題である。 私たちは以前TGNから細胞膜への輸送に関わる新規輸送キャリアーであるCARTSを同定した。CARTSはデスモソームの構成因子やPAUF(pancreatic adenocarcinoma upregulated factor)などの分泌タンパク質を含むが、従来の輸送マーカーであるVSV-G(水疱性口内炎ウィルスのコートタンパク質)は含まないためVSV-Gの輸送キャリアーと異なることがわかっていた。 私たちは今回CARTSの微小管上の移動にキネシン-5/Eg5が特異的に関与することを明らかにした。Eg5は細胞分裂の際の紡錘体形成において重要な役割を担うことがわかっていたが、私たちは間期においてEg5がPAUFの分泌に必要であることを見出した。興味深いことに、VSV-Gの細胞膜への輸送にEg5は必要ないことがわかった。モーター活性を消失したEg5変異体はCARTSの移動速度を低下させ、この時CARTSはゴルジ体の周囲に蓄積した。一方、CARTS形成はEg5阻害剤の影響を受けなかった。これらのことから、間期においてEg5はCARTSのTGNから細胞膜への輸送に関与することが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画どおり蛍光タンパク質mRFPとGFPをそれぞれ融合させたPAUF(CARTSマーカー)とα-tubulinをHeLa細胞に発現させlive cell imagingによりCARTSが微小管上を移動する様子を観察することに成功した。また、当初困難と考えられたCARTSの移動速度を測定することもできた。Eg5のモーター活性を消失した変異体をHeLa細胞に過剰発現させてCARTS動態を調べた結果、移動速度に顕著な低下が見られEg5がCARTS移動に働くことの直接的証拠を得ることができた。また、Eg5の機能阻害は従来の輸送マーカーであるVSV-Gの輸送に影響せず、Eg5がCARTS輸送に特異的に働くという非常に興味深い結果を得た。 CARTSへの積み荷選別メカニズムの解析については、PAUFの選別シグナルを同定するためC末端側欠失変異体を複数作製して、それらの細胞内局在と分泌量を調べた。その結果、C末端側の30アミノ酸が小胞体からの輸送に必要であることが明らかになった。ゴルジ体からの輸送に関しても同じシグナルが使われているのではないかと考えている。PAUF-MycHis安定発現株および抗PAUF抗体を作製したが、ウェスタンブロッティングでは量的な問題から単離したCARTS中にPAUFを検出するのは困難であり、積み荷選別のためのin vitro系は確立できていない。その一方で、RNAi法によるタンパク質の発現抑制とCARTS形成実験系を組み合わせることに成功し、膜タンパク質についてはCARTS形成への関与を直接、定量的にモニターすることが可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
Eg5は紡錘体形成の際ホモ四量体を形成し、二量体からなる2つのモーター部位が逆平行に並んだ二本の微小管をスライドさせる。この働きにより双極性の紡錘体が形成される。Eg5は細胞周期によらず安定的にホモ四量体として存在すると考えられる。このことは間期におけるCARTS輸送についても逆平行微小管の滑り込みが重要である可能性を示唆しており、神経軸索で見られるようなキネシンが微小管に沿ってプラスエンドに小胞を輸送する様式は、CARTS輸送には該当しないと考えられる。Eg5はCARTSそのものよりも、CARTSが結合した微小管を運ぶのかもしれない。C末端側の尾部を欠失させたEg5変異体(ΔC:1-591 a.a.)はホモ四量体を形成せず、一本の微小管にのみ結合するホモ二量体として存在する。ホモ四量体型Eg5のCARTS輸送への関与を調べるため、ΔC変異体をHeLa細胞に過剰発現させた場合にドミナントネガティブとして働きPAUFの分泌が抑制されるかどうかを調べる。また、CARTSの微小管に沿った移動が抑制されるかどうかをlive cell imagingにより調べる。 TGN46を発現抑制した細胞では、未成熟型のPAUFが分泌されることがわかった。興味深いことに、同様の効果は脂質輸送を介してTGNの膜ドメイン形成に関わる可能性があるVAPというタンパク質の発現抑制でも見られた。TGN46がそのような膜ドメインにおいて積み荷タンパク質と糖鎖修飾酵素を結びつけているかどうかを調べる。また、VAPを介した脂質輸送・膜ドメイン形成がCARTS形成に与える影響を前述の実験系により解析する。これは当初の目的であるプロテインキナーゼD上流のシグナル経路の解明につながると期待される。
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Research Products
(4 results)