2014 Fiscal Year Research-status Report
マイクロ流路を用いた動的な場の制御による進行波走化性の解析
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25840069
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中島 昭彦 東京大学, 総合文化研究科, 特任助教 (90612119)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 走化性 / 整流作用 / 細胞性粘菌 / ライブセルイメージング / 微小流路 / 適応 / 数理モデル / 自己組織化 |
Outline of Annual Research Achievements |
組織中の誘引物質の場は時間的、空間的にダイナミックに振る舞うと考えられる。そのような場で、細胞が必要な情報を読み取り、向かう方向を知るメカニズムに関しては理解が進んでいない。動的で複雑な環境下で細胞がどのように意思決定をおこない、動く方向を決定するのか。本研究では、走化性研究のモデル系細胞性粘菌が示す動的な走化性誘引場に対する一方向運動メカニズムを明らかにする。昨年度までに構築した、cAMPの勾配場を時間的空間的に自在に変動させる流路系をもちいて細胞の走化性運動における時間と空間情報の統合の仕組みについての解析を実験、理論の両面から進めた。様々なcAMP濃度域を用いて勾配を形成し、動的変動に対する走化性応答を調べたところ、昨年度までの我々の発見と同様、濃度が時間的に減少する勾配に対しては方向検出応答がみられないという振舞いが広い濃度域において観察された。つまり、ダイオードのような、時間的な増減に対して強い選択性「整流作用」をもった方向検出応答が細胞に内在することを明らかにした。整流的な応答は走化性シグナル経路下流のフォスファチジルイノシトール3リン酸キナーゼ(PI3K)活性、および運動装置であるアクチン重合阻害下においても観察された。これらのことから、下流の反応による増幅や細胞の運動に伴った運動方向に関する記憶の保持が失われた状況下でも、整流作用をもった方向検出によって進行波走化性が実現されることを示した。一連の実験結果をもとに構築した数理モデルの解析から、整流作用をもった走化性応答は、濃度変化に対する応答の反応機構に超感度性(ultra-sensitivity)が内在することで実現できることを明らかにした。これらの結果を論文にまとめて報告した(Nakajima, et al., Nat. Commun., 2014)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
進行波に対する一方向運動性(進行波走化性)を可能にするメカニズムとして、誘引物質に対する整流的な細胞応答が存在することを明らかにし、これらの結果に関して論文一報を報告した。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞の示す整流作用がいかにして実装されているのか、細胞内分子動態のライブイメージングをより詳細におこなうことによって理解をすすめる。計画していた新規流路系については、いまだ条件検討中のため、その系の確立に取り組む。
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Causes of Carryover |
消耗品購入に使用する予定であったが、該当商品の在庫がなかったため、次年度に購入することにした
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
消耗品購入に当てる
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Research Products
(9 results)