2013 Fiscal Year Research-status Report
新たな小胞体調節因子PecanexのNotchシグナル活性化における機能の研究
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25840074
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山川 智子 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (20645402)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | Notchシグナル / 小胞体 / ショウジョウバエ |
Research Abstract |
Notchシグナル伝達系は、多細胞生物の発生過程で細胞の運命決定に機能しています。私のこれまでの研究から、ショウジョウバエPecanex (Pcx)は、小胞体に局在して、Notchの活性化に必要であることがわかりました。さらに、Pcxが小胞体の形態形成に必須であることもわかってきました。このことから、Pcxは小胞体の構造や機能で働いており、これがNotchシグナル伝達に必要である、という仮説を立てました。 そこで、pcxの分子機能を理解するため、Pcxの調節因子を網羅的に探索することにしました。私の研究から、母性効果を欠いたpcxヘテロ接合体胚 (pcx/+胚)が温度感受性致死を示すことを発見しました。pcx/+胚は、18℃で胚性致死、25℃で蛹性致死を示しますが、28℃では成虫まで生存し生殖も可能です。この特性を利用した、ユニークな探索を行いました。すなわち、第2または第3染色体の任意の領域を欠失したpcx/+胚を作成し、これを25℃と28℃でそれぞれ飼育することで、pcx/+胚の示す温度感受性致死を変化させる遺伝子を同定するという手法です。その結果、1つのpcx抑制性調節因子、Nsf2と、3つのpcx促進性調節因子、Big brain、Delta、Neuralizedを同定することができました。このうちのBig brain、Delta、NeuralizedはNotchシグナル伝達の既知の構成因子であり、これらが同定されたことから、まだ同定されていない領域内にNotchシグナル伝達の新規構成因子が含まれている可能性が期待されます。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
25年度における研究では、pcxと遺伝的に相互作用する調節因子の探索において、新たに2つの調節因子を同定することができました。pcx抑制性調節因子としてBrother of Bearded Aを、pcx促進性調節因子としてJim lovellを得ました。これにより、25年度に掲げた目標の1つを達成することができました。Brother of Bearded Aは、Beardedファミリーの構成因子として報告があり、BeardedファミリーはNeuralizedを抑制することによってNotchシグナル伝達を抑制しています。このことは、Brother of Bearded Aがpcxの抑制性調節因子として同定されていることと一致しています。また、pcx促進性調節因子としてNeuralizedが同定されていることから、Brother of Bearded AとNeuralizedとの相互作用にpcxが関与している可能性が期待されます。さらに、Brother of Bearded Aが単体としての機能を示唆する結果はこれまでに報告がなく、新たな知見が得られるのではないかと考えています。一方、Jim lovellは転写因子であることが報告されていますが、Notchシグナル伝達との直接的な関連についてはまだわかっておらず、Notchシグナル伝達における新たな制御機構が解明できるのではないかと考えています。 また、小胞体の形態形成に関して新たな知見を得ることができました。pcxの機能を失った胚では小胞体が形態異常を示すことから、小胞体の形態形成を詳細に観察しました。その結果、野生型胚において、初期胚と後期胚で分裂様式が異なることを発見しました。このような知見はこれまでになく、細胞分裂という普遍性の高い現象に、新たなメカニズムを導入できるのではないかと期待しています。
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Strategy for Future Research Activity |
今回、新たにpcx抑制性調節因子として得られたBrother of Bearded Aとpcx促進性調節因子として以前に得たNeuralizedとの相互作用について、pcxがどのように関わっているのかを調べます。Neuralizedは、NotchのリガンドであるDeltaが細胞内へ取り込まれることに機能しており、Deltaの活性化に必須です。Beardedファミリーは、Neuralizedを抑制します。そこで、pcxの機能を失った胚でDeltaの輸送に異常が生じるか、neuralizedやBrother of Bearded Aの突然変異体胚におけるDeltaの輸送異常がpcxの影響によって変化するか、調べたいと考えています。また、pcxが促進性調節遺伝子であるjim lovellの上流で機能しているか下流で機能しているかを調べます。 さらに、pcxの機能を失った胚における小胞体の形態形成を観察します。25年度の研究で明らかとなった、初期胚と後期胚で異なる小胞体の分裂様式が、pcxの機能を失った胚ではどのような影響を受けるかについて、着目したいと考えています。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度における研究において、pcxと相互作用する小胞体形成遺伝子の網羅的探索を計画しました。しかしながら、条件検討に時間を要したため、申請した予算を次年度へ繰り越すこととなりました。大規模な網羅的探索は、26年度に行う予定です。 pcxと相互作用する小胞体形成遺伝子の網羅的探索を遂行するため、数多くのRNA干渉系統の購入費と、それらの維持費、またこれらに対する抗体染色の試薬類の購入費に繰り越した予算を使用したいと考えております。 また、25年度の研究により、小胞体の形態形成に関して新たな知見を得ることができました。そこで26年度では、pcxがどのようにして小胞体の形態形成に関わっているのか、詳細に調べていく必要があります。そのためには、イメージングに特化した研究室との共同研究を行う必要があり、共同研究費や小胞体ライブイメージングに必要な試薬の購入等に本助成金を使用したいと考えています。
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[Journal Article] A gain-of-function screen to identify genes that reduce lifespan in the adult of Drosophila melanogaster2014
Author(s)
Minoru Nakayama, Tomoki Ishibashi, Hiroyuki O Ishikawa, Hiroyasu Sato, Takao Usui, Takayuki Okuda, Hiroyuki Yashiro, Hironori Ishikawa, Yoshie Taikou, Asako Minami, Kengo Kato, Masataka Taki, Toshiro Aigaki, Wataru Gunji, Masaya Ohtsu, Yasufumi Murakami, Sei-ichi Tanuma, Alice Tsuboi, Mai Adachi, Junpei Kuroda et.al.
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Journal Title
BMC Genetics
Volume: 15
Pages: 印刷中
DOI
Peer Reviewed
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