2013 Fiscal Year Research-status Report
新規還元酵素ERdj5による小胞体恒常性維持機構の解明
Project/Area Number |
25840079
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
潮田 亮 京都産業大学, 総合生命科学部, 助教 (30553367)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 小胞体品質管理 / レドックス制御 / 小胞体関連分解 / カルシウムホメオスタシス |
Research Abstract |
小胞体におけるタンパク質品質管理ではミスフォールドタンパク質を速やかに小胞体から排除し、分解する小胞体関連分解(ERAD)という機構が存在する。基質の認識、輸送チャネルからの排除まで多くの複合体が動的に関与しており、その破綻は細胞死を引き起こし、神経変性疾患など多くの重篤な病気の原因となり得る。我々は、以前の研究から小胞体で初めて還元活性に特化する還元酵素ERdj5を同定した。ERdj5は小胞体ストレスで惹起され、EDEM、BiPといった基質認識に関わる因子と超分子複合体を形成し、初めて基質に対して還元活性を発揮する(R. Ushioda et al. Science 2008、M. Hagiwara et al. Mol.Cell 2011)。今回、我々は糖タンパク質と非糖タンパク質の分解機構が、ERdj5を含む複合体の違いによって2つの経路に分かれることを見出し、また、小胞体ストレスに応じて非糖タンパク質経路が糖タンパク質経路のバックアップとして働くことを見出した(R. Ushioda et al. Mol. Biol. Cell 2013)。 小胞体の維持機構にはタンパク質品質管理の他、レドックス制御、カルシウムホメオスタシスといった環境要因が複雑にクロストークしていると考えられる。小胞体恒常性維持機構を解明すべく、ERdj5の還元力によるカルシウムホメオスタシスへの影響に焦点をあて、研究を進めている。 ERdj5と小胞体膜上に存在するカルシウムポンプSERCA2との相互作用を見出した。ERdj5による還元活性がSERCA2のポンプ機能を調節することがわかった。この複合体形成は小胞体内腔のカルシウム濃度に依存し、会合・解離することがわかった。現在、論文投稿準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究を通じて還元酵素ERdj5を介した小胞体関連分解に関し、糖タンパク質のみならず非糖タンパク質のERADにも独立した経路でERdj5が影響を与えることを見出した(R. Ushioda et al. Mol. Biol. Cell 2013)。また、ERdj5の還元活性がタンパク質品質管理に留まらず、カルシウムホメオスタシス、レドックス制御などに影響を与え、小胞体機能の恒常性に影響を与える新しい知見を得ている。共同研究先でのカルシウム動態のデータを加え、より説得力のある論文を作成するため、当初の予定よりも投稿までの時間が伸びている。しかし、計画には問題なく、これらのことを論文にまとめ、現在論文投稿準備中である。また、当初予定していた研究も進んでいるので概ね計画通りといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
ERdj5によるSERCA2カルシウムポンプの制御機構を論文にまとめ、投稿する。以降、当初の計画通り、ERdj5によるカルシウムホメオスタシスの制御機構の解明に焦点を当て、研究を進めていきたい。また、他のカルシウムチャネルであるIP3Rへの影響を観察する。IP3Rの活性は分子シャペロンBiPとの結合で制御されており、ERdj5のJドメインの機能にも着目したい。現在、理化学研究所チームリーダー御子柴克彦教授との共同研究によりIP3RとERdj5との結合実験およびカルシウム動態への影響について解析を依頼している。SERCA2およびIP3Rのレドックス状態が小胞体のカルシウム濃度をセンスしているかどうか、またセンスしているとすればどのようなメカニズムなのかは興味深い。いくつかのイオノフォアやSERCA2の阻害剤であるタプシガルジンなどを使い、小胞体のカルシウム濃度を低下させた場合のSERCA2およびIP3Rのレドックス状態を観察したい。また、ERdj5がSERCA2およびIP3Rのレドックス状態を変化させるのであれば、小胞体のカルシウム濃度に応じてERdj5の還元活性や複合体形成に変化が生じる可能性がある。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
目的タンパク質(ERdj5、SERCA2b)の細胞内動態を観察する上で、放射性ラベルで観察する前に、蛍光観察を取り入れて局在や安定性について研究を進めたところ、細胞内動態を、より詳細に調べることが出来るようになったが、予想外の日数を要したため、年度内の完了が困難となった。 繰越分の予算に関しては、蛍光観察によって局在を観察した後、速やかに放射性同位体を用いて実験を行うために使用する。また、次年度請求額に関しては、計画書通り実験を進めるために使用する。具体的には、ERdj5によるSERCA2、IP3R、またはその他のカルシウムトランスポータへの影響を観察し、当初の目的どおり還元酵素ERdj5による小胞体内腔のカルシウムホメオスタシスの影響を観察する。
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Research Products
(5 results)