2013 Fiscal Year Research-status Report
オーキシン排出トランスポーターPINの偏在化制御機構解明へ向けた多角的アプローチ
Project/Area Number |
25840101
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
楢本 悟史 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (30612022)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | オーキシン / 極性形成 / 細胞膜ドメイン / 細胞壁 |
Research Abstract |
本年度は,植物細胞の極性形成機構を明らかにするために,オーキシン排出担体 PIN タンパク質の細胞膜における局在化機構および葉脈パターンが異常になる van 突然変異体の解析を行った.まず,これまでにPIN2は,細胞膜上で未知のドメイン構造 (以下,PIN2クラスター) を形成することを見出しており,これに着目した細胞生物学的解析を行った.PIN2 クラスターの動態を調べるために,経時観察を行ったところ,PIN2 クラスターは,細胞膜上で,4 時間渡って拡散移動せず,静的な構造体を形成することが明らかになった.また様々な阻害剤の PIN2 クラスターへの影響を解析したところ,細胞骨格阻害剤添加に対して,PIN2 クラスターは非感受性であったのに対して,細胞壁分解酵素,特にペクチン分解酵素添加次には,顕著にクラスター構造が減少することが明らかになった.また,ペクチンの分解酵素PMEI 過剰発現体でも同様の現象が観察された.以上の結果より,PIN2 クラスターの構造および動態は,細胞壁成分のペクチンの影響下にあることが明らかになった.一方,様々な突然変異体下で PIN2 クラスターの局在様式を解析したところ,mab4 変異体下で著しくクラスター構造が減少することも明らかになった.以上の解析により PIN2 クラスターはペクチンおよび機能未知遺伝子MAB4 の制御下にあることが明らかになった. 一方,新規極性制御因子の同定を目的としてvan 6 突然変異体の解析を行った.全ゲノムシーケンスによる解析とマップベースクローニングを並行して行い,van6 変異体の原因遺伝子の候補を11 個に絞ることに成功した.これらの遺伝子の細胞極性形成への関与はこれまでに報告されておらず,VAN6 は新規極性制御因子をコードすることが明らかになった.現在原因遺伝子のさらなる絞り込みを行っている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成 25 年度実施予定の研究計画として,(1) PIN2 ドメインの詳細な細胞生物学的解析.(2) PMEI 過剰発現体における PIN タンパク質の細胞生物学的解析 (3) 新規極性形成制御因子の同定の 3 点を掲げた.研究実績の概要に記述されているようにこれらに関する計画の大部分は,予定どおり行われている. また,平成 25 年度の実験計画に記載されていながらも,研究実績として記載されていない,native PAGE や FCS 法による PIN2 のオリゴマー形成に関する研究は,現在解析中であり,予備的ながら,PIN2 タンパク質はオリゴマー形成をすることを見出している.以上のことから,現在までの研究達成度はおおむね順調に進展していると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
まず,現在解析中である PIN2 のオリゴマー形成に関する実験を行い,PIN2 は細胞膜上でオリゴマー形成することの有無を解析する.また昨年度,原因遺伝子候補を絞り込んだ van 突然変異体に関して,引き続き昨年度と同様の解析を行うことで,原因遺伝子の同定を目指す. 昨年度の解析から MAB4 が PIN2 のドメイン形成に関わることが明らかになった.今年度は,当初の研究計画どおり,MAB4 の細胞膜における局在様式を PIN2 クラスターにおける解析と同様の手法を用いて詳細に解析することで,MAB4 と PIN2 の相関を解析する.さらには,FRET, FCS 解析により PIN と MAB の相互作用の有無を検討する.なお,これにより相互作用が検出されない場合には split YFP 法や免疫沈降法などの別の手法を用いて検討する予定である.また,PIN2 のクラスター形成機構および極性局在機構を明らかにすることを目的として,PIN2 の複合体の単離・同定も目指す.具体的な手法としては免疫沈降法を用いる.本実験には良質な抗 PIN2 抗体が必須であるが,これに関しては,共同研究者である Jiri Friml 教授より分与していただいている.また,抗 PIN2 抗体を用いた免疫沈降の実験がうまくいかない場合には, PIN2-HA 発現体あるいは PIN2-GFP 発現体を用い,免疫沈降の実験を行う予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本来は研究補助員を雇用する人件費にあてる予定で計画していたが,適切な応募者がいなかったため,研究費の使用方法の変更を強いられたため. 消耗品としては,顕微鏡観察・植物個体観察・タンパク質実験に関するものおよびその他日々の研究活動に必要な物の購入費用を申請する.また,旅費として国内・国外学会発表費用を申請するとともに,国外との共同研究に関わる出張費用を申請する.その他の項目として主要なものとしては,論文投稿に関わる費用・英文校閲費用等を申請する.
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Research Products
(4 results)