2013 Fiscal Year Research-status Report
暗所視を可能にする光受容タンパク質の分子基盤の解明
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25840120
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
櫻井 啓輔 筑波大学, 生命環境系, 助教 (20647317)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 視細胞 / オプシン / 桿体 / 錐体 / アカハライモリ / ノックインマウス / ヤツメウナギ |
Research Abstract |
視細胞の機能が光環境に適応した進化プロセスを明らかにすると共に、視細胞の生理的特性を決定するタンパク質の分子的基盤を明らかにすることを試みている。まず、ロドプシンと錐体視物質の性質の違いが視細胞の光応答特性に果たす役割について検証する為、ニワトリ緑色感受性オプシン(以下、ニワトリ緑)を相同組換え法によりロドプシン遺伝子座に導入したノックインマウスの視細胞の電気生理学的解析を行った。野生型とニワトリ緑ホモ体の3週齢マウスにおいて、桿体視細胞の光応答を吸引電極法により測定した。単色光(500 nm)のフラッシュ光に対する光感度(最大応答の1/2の光応答に必要な反応視物質数)を比較したところ、野生型は16 R*であるのに対し、ニワトリ緑ホモ体は42 R*であった。つまり、光感度に関しては、ニワトリ緑ホモ体は野生型に対して1/2.6倍に低下することが分かった。また、単一光子応答(視物質一分子反応により発生する光応答)の振幅は、野生型で0.53 pAであったのに対し、ニワトリ緑ホモ体で0.22 pAであった。つまり、単一光子応答の振幅に関しては、野生型に対してニワトリ緑ホモ体は約1/2.5倍に低下することが分かった。続いて、光応答の形状を比較したところ、ピークに達するまでの時間は野生型で159 msであったのに対し、ニワトリ緑ホモ体で145 msとホモ体の方が有意に短くなることが分かった。 さらに、アカハライモリの桿体視細胞に変異錐体視物質を発現する為の導入ベクターの構築を行い、赤錐体視物質遺伝子の部位特異的変異体を作製した。電気生理学的予備実験として、野生型イモリを用いて桿体及び錐体視細胞の電気生理学的測定系の確立を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画では、ニワトリ緑遺伝子をロドプシン遺伝子座に導入したノックインマウスを用い、M2グループ錐体視物質とロドプシングループの光応答の違い及び暗状態での熱安定性の比較解析を予定していた。初年度は当初計画通り、吸引電極法を用いて、光応答の違いに関し詳細な比較解析を行った。また、ニワトリ緑ホモ体では野生型に対してノイズの増大が観察され、予備的な結果ではあるが野生型に対してニワトリ緑の方が約500倍不安定と推定された。 また、第二の計画として、現存する脊椎動物で最も原始的と考えられるヤツメウナギに着目し、ヤツメウナギロドプシンを含む視細胞の電気生理学的特性を調べる計画であった。しかし、例年に比べヤツメウナギの採取数が少なく、生体ヤツメウナギの入手が困難であった為、次年度に遂行予定であった第三の計画を前倒しで遂行した。 第三の計画では、次年度以降に遂行予定であった赤色錐体視物質の変異体を桿体視細胞に異所発現させたトランスジェニックイモリの作製及び電気生理学的解析を、初年度に計画を前倒しで遂行した。三種類の赤色錐体視物質変異体の作製及び野生型のアカハライモリの桿体・錐体視細胞から電気生理学的特性の解析を行った。以上を総合的に鑑み、研究計画はおおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
第一の計画に関しては、これまでM2グループに属するニワトリ緑遺伝子をロドプシン遺伝子座に導入したノックインマウスを用い、光応答の解析を行ってきた。今後は、M2グループ視物質とロドプシングループの暗条件下での熱安定性の違いを明らかにする為、暗状態で視細胞の外節を流れる電流のノイズを、野生型とニワトリ緑ホモ体で比較解析を行う計画である。 第二の計画に関しては、桿体と錐体視物質の中間状態の性質を示すと推定されるヤツメウナギロドプシンの電気生理学的な特性を調べる為に、ヤツメウナギの桿体視細胞から吸引電極法を用いて光応答及び暗ノイズの測定を引き続き行う計画である。多方面からの実験材料の入手を検討し、今年度は計画遂行に十分な匹数を確保している。 第三の計画に関しては、視物質の熱安定性に関わると推定されるアミノ酸残基を置換した赤錐体視物質を、アカハライモリの桿体視細胞に異所発現させ、その視細胞応答特性の解析を行う。まず、既に作製した三種類の部位特異的変異体を導入した赤色錐体視物質と蛍光タンパク質mCherryを挿入したベクターを構築し、イモリ受精卵に注入することにより、トランスジェニックイモリの作製を行う。さらに、作製したトランスジェニックイモリの桿体視細胞の暗条件下でのノイズの増減を各変異体について測定をすることにより、熱安定性に関わるアミノ残基を同定する計画である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
調達を予定していた電気生理学備品について、海外からの輸送が寒波による遅れが生じ当該年度内に納品が困難となった為。 昨年度予定していた電気生理学備品の調達を行う計画である。
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[Journal Article] Cone Phosphodiesterase-6α′ Restores Rod Function and Confers Distinct Physiological Properties in the Rod Phosphodiesterase-6β-Deficient rd10Mouse2013
Author(s)
Wen-Tao Deng, Keisuke Sakurai, Saravanan Kolandaivelu,Alexander V. Kolesnikov, Astra Dinculescu, Jie Li, Ping Zhu, Xuan Liu,Jijing Pang, Vince A. Chiodo, Sanford L. Boye, Bo Chang,Visvanathan Ramamurthy, Vladimir J. Kefalov, and William W. Hauswirth
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Journal Title
The Journal of Neuroscience
Volume: 33(29)
Pages: 11745-11753
DOI
Peer Reviewed
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