2013 Fiscal Year Research-status Report
哺乳動物が環境光を感知するためのメラノプシンの分子特性の解明
Project/Area Number |
25840122
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
塚本 寿夫 分子科学研究所, 生命・錯体分子科学研究領域, 助教 (90579814)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 光受容 / 環境光 / ロドプシン / 分光学 / タンパク質 / 体内時計 |
Research Abstract |
哺乳類は、他の動物と同様に、光情報を視覚のみならず、体内(概日)時計の調節など「非視覚」の用途にも用いている。体内時計を光によって調節する場合、それぞれの動物が活動している環境がどの程度の光強度にあるのかをうまく感知する必要がある。哺乳類の場合、そのような光環境の感知にメラノプシンと呼ばれる光受容タンパク質が関与していることがすでにわかっている。本年度は、種々の哺乳類が持つメラノプシンについて、それらが環境光を感知するためにどのような分子特性を持ち、その分子特性がどのようにして生み出され、調節されているのかを分光学的・生化学的手法を用いて解析した。 具体的には、ヒトとマウスのメラノプシンの分子特性を比較したところ、両者の安定性が大きく異なることを見出した。この結果は、昼行性のヒトと夜行性のマウスでは大きく異なる光環境で活動していることと連関していると考えられた。さらに、両メラノプシンに対して、部位特異的変異を導入した実験から、異なる安定性が、細胞外領域のアミノ酸配列の違いによってもたらされることを示唆する結果を得た。すなわち、ヒトとマウスが進化の過程で異なる光環境で生活するようになったことに応じて、メラノプシンの安定性に違いが生まれるようなアミノ酸配列の置換が起こったと示唆された。 さらに、ヒト以外の霊長類が持つメラノプシンについても安定性を比較し、比較的近縁なアミノ酸配列を持つ霊長類メラノプシンの間でも、安定性が顕著に多様化していることも見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまで、哺乳類メラノプシンがどのようにして環境光の受容に適した(あるいは適していない)分子特性を実現しているのかについては、ほとんど知見はなかった。しかし、本年度の研究から、哺乳類メラノプシンが「非視覚」の光受容にどのようにして寄与しているのかについて理解するための端緒となる結果を得ることができたのは、当初の計画より順調に進んでいることを示している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでの解析から明らかになった、哺乳類メラノプシンの分子レベルでの特性が、実際にどのような細胞レベルでの光応答に関与しているのかを明らかにすることを目指す。具体的には、異なる特性を示すメラノプシンを発現させた細胞に対して、電気生理学的手法を用いて、光応答特性を解析し、分子レベルの特性と細胞レベルの特性の相関を明らかにすることを目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
「現在までの達成度」に述べたように、今年度は計画以上の進展があり、その進展に基づき次年度にさらに研究を発展させるために、平成25年度の予算の一部を平成26年度に移して執行することが必要であるため。 平成25年度執行から繰り延べた研究費と合わせた平成26年度執行の研究費を用いて、「今後の推進方策」に述べたような、メラノプシンを発現させた細胞の光応答特性を、より詳細かつより広範囲に検討することを可能にする。
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