2014 Fiscal Year Research-status Report
クリプト藻における射出器官の成立・進化に関する研究
Project/Area Number |
25840128
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
山岸 隆博 神戸大学, 自然科学系先端融合研究環重点研究部, 助教 (30379333)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 細胞内共生 / 藻類 |
Outline of Annual Research Achievements |
海産クリプト藻Pyrenomonas helgolandiiにおいて、これまで同定されている4つのトリコシスト関連タンパク質(PheTri1, 2, 3-1, 3-2)のうち、PheTri3-1についてポリクローナル抗体を作製した。間接蛍光抗体法により、本抗体が、クリプト藻のトリコシストを高い特異性でディテクトできることを明らかにした。 本抗体を用い、トリコシストの細胞分裂周期における挙動および輸送経路を解析する目的で、P. helgolandiiにおける細胞分裂同調系を確立した。 プラシノ藻の一部では,クリプト藻が有するトリコシストに類似したロール状のリボン様構造が観察される。リボン様構造精製分画のTricine-SDS-PAGE解析から,リボン様構造は分子量13 kDa~17.5 kDaの複数のタンパク質とトルイジンブルーによって染色される分子量約1.7 kDa~4.6 kDaの複数の低分子酸性多糖物質から成ることが予測された。検出されたタンパク質のN末端解析およびウェスタン解析は,これらがコアヒストン(histone H3, H2A, H2B, H4)であることを明らかにした。免疫染色による局在解析は,明らかに,コアヒストンがリボン様構造に局在することを明らかにした。また,リボン様構造の単糖組成分析およびlysozymeによる分解特性から,リボン様構造がβ(1-4) 結合のN-acetyl-glucosamineを含む多糖から成ることを明らかにした。さらに,この多糖とリコンビナント8量体コアヒストンを用いたin vitroでの再構築実験から,コアヒストンがリボン様構造の重要な構成タンパク質であることを明らかにした(論文投稿中)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
クリプト藻のトリコシストに対する特異抗体の作製に成功したことや、細胞分裂の同調系を確立した点で、おおむね順調に進行していると考える。 しかし、トリコシストの膜タンパク質の解析は、トリコシストの精製分画の獲得が困難であることから、当初の予定より遅れている。
|
Strategy for Future Research Activity |
クリプト藻トリコシスト構成遺伝子のN末端領域には小胞体輸送や他のオルガネラ輸送とは全く異なるシグナル配列が存在する。このシグナルペプチドのターゲットおよび機能を分子生物学的手法を用いて解明することで、トリコシスト関連物質の宿主―オルガネラ間輸送メカニズムを解明する。この研究課題を達成するために、クリプト藻に汎用的な一過的遺伝子発現系を開発する。Guillardia theta (CCMP2712)のゲノムが公開されているので(JGI)、このデータベースを利用し、高発現プロモーターの開発を行う。高い発現能を有するプロモーターが得られない場合は、プ」モーターレスベクターを用いたクリプト藻ゲノム断片のショットガンクローニングにより、独自に高発現能を有するプロモーターを開発する。また、エレクトロポレーション法およびパーティクルガン法などを用いて、遺伝子導入技術の開発を行う。シグナルペプチドのN末端にGFPなどのレポーター遺伝子および開発したプロモーター配列を結合したプラスミドを構築する。構築したプラスミドは、培養細胞へ遺伝子導入し、継時的に観察を行い、蛍光タンパク質の局在を解析し、宿主―オルガネラ間輸送メカニズムを解明する。 平成26年度に作製したポリクローナル抗体を用い、間接蛍光抗体法または免疫電顕法などにより、トリコシスト関連タンパク質の詳細な輸送経路の解明を試みる。
|