2014 Fiscal Year Research-status Report
生活環・感染様式から探る藻類寄生性ツボカビ類の進化
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25840135
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大田 修平 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特任助教 (20455926)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ツボカビ / レクチン / 進化 / 生活環 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は原始的菌類の一群であるツボカビ類の生活環や藻類への感染様式を光学顕微鏡や透過型電子顕微鏡を用いて詳細に観察し、原始的菌類の細胞体制や進化を明らかにすることを目的としている。 初年度(平成25年度)ではツボカビ類をカルチャーコレクションから選定し、代表的な3株 (Terramyces subanglosum, Chtriomyces hyalinus, Allomyces javanicus) の継代培養と藻類との二員培養を試みた。 次年度(平成26年度)では、ツボカビ類のレクチン染色を行い、細胞表面の糖鎖の分布を調べた。特に C. hyalinus ATCC-28165 の糖鎖の分布をFITC-WGA(フルオレセインイソチオシアネートが結合したwheat germ agglutinin)を用いて蛍光顕微鏡観察したところ、胞子のうの表面と rhizoidal network の基部で特に強いシグナルを観察した。一方で遊走子は FITC-WGA のシグナルが観察されなかった。これはツボカビ表面の N-acetyl-D-glucosamine の分布を示していると考えられる。ツボカビにおける生活環のレクチン局在パターンの違いは、感染様式と何らかの関係があると推測されるが、さらなる解析が必要である。 本研究では、宿主藻類として Haematococcus pluvialis (ヘマトコッカス藻) に着目している。これは、ヘマトコッカス藻を屋外大量培養した際のツボカビの被害が複数報告されているからである。研究の過程でヘマトコッカス藻の学名にいくつかシノニムが存在し、混乱していることがわかった。本研究では、将来的な学名適用の混乱を防ぐため、凍結保存株に基づくエピタイプを指定し、客観的な学名の適用を提案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は C. hyalinus ATCC-28165 の生活環全ステージの細胞表面糖鎖分布を FITC-WGA を用いて調査することができ、研究成果は論文として発表した。現在は電子顕微鏡の固定条件を検討中である。また、宿主藻類の命名法上の問題点の洗い出しと学名の整理なども進めることができた。これに関しても論文公表準備中であり、総合して研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度実施したレクチン染色による糖鎖の局在解析は、他のツボカビ2種にも適用できるため、本手法により今後の研究進捗を加速できるものと考えている。今年度(平成27年度)は特に透過型電子顕微鏡観察によるツボカビ類の微細構造の比較研究に取り組みたい。現在までに化学固定法による透過型電顕法を試みているが、最適な固定条件を見いだせていない。このため、今年度の出来るだけ早い時期に固定法の最適条件を見つけ、透過型電顕による細胞体制の解明を行う。 Allomyces は有性生殖を行うことが知られている。このため、植物と菌類といったような界をまたぐ性の進化を他の生物と比較することができる。本年度は特に Allomyces を集中して観察することで、他の生物と比較可能な土台を作ることを目的として、今後の研究を進めたい。
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Causes of Carryover |
主に旅費等の使用額が想定より少なかったため、差額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は海外出張を計画しており、国内学会旅費と含めて、研究計画の予算執行が行えると考えている。また論文の英文校閲料や投稿料も研究計画通りの予算執行を目指す。
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