2013 Fiscal Year Annual Research Report
野生植物の地域適応における遺伝的基盤の解明:次世代シーケンサーによる新展開
Project/Area Number |
25840139
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岩崎 貴也 東京大学, 総合文化研究科, 研究員 (10636179)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 地域適応 / 系統地理 / 集団遺伝学 / 地理情報システム / 進化 |
Research Abstract |
本研究は、東アジアに広く分布するアブラナ科の野生植物コンロンソウに着目し、種内の地域適応についての遺伝的基盤の解明や、その地域適応パターンにおける時空間変動の推定を目的として、3年間の計画で開始された。 平成25年度は、北海道や中部地方でサンプリングを行い、これまでに極東ロシアや日本列島、韓国で採集したサンプルと合わせた204地点のサンプルについて、次世代シーケンサーを用いたRAD-Seq法による遺伝解析を行った。新たに導入したワークステーションや次世代シーケンサー用ソフトウェアなどを用いてデータ解析を行った結果、1873遺伝子座についてその後の解析に使用可能な種内多型を検出できた。そのうちの507遺伝子座を用いてSTRUCTURE解析などの集団遺伝学的解析を行ったところ、北海道の札幌付近を境にして南北の強い遺伝的分化があること、更にその南北集団内でも地理的にまとまった多数の遺伝子集団が存在していることなどが明らかになった。これは、過去の氷期において、互いに隔離された逃避地が各地に多数存在していたことを示唆している。更に現在、検出できたこの中立な遺伝的分化のパターンを元にし、このパターンから大きく外れる非中立な分布・挙動を示すような遺伝子座の探索を進めている。ここで探索できた遺伝子座の近傍にある機能遺伝子は、この植物における地域適応を担う適応遺伝子である可能性が高いと考えられる。 今後はさらに研究を進め、より詳細な適応遺伝子の探索や、GISを用いた地域適応における時空間変動の推定などを行っていく予定であった。しかし、本研究テーマと一部重複する内容で、研究代表者が平成26年度からの日本学術振興会特別研究員に採用されたため、科学研究費補助金の重複受給の規定に従い、平成25年度末で廃止することとなった。今後は、特別研究員奨励費の研究の中で、このテーマについて更に継続して研究を進める。
|