2014 Fiscal Year Research-status Report
多様な社会性を示すチビアシナガバチ属における分巣行動の複数回起源に関する研究
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25840143
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
諸岡 歩希 茨城大学, 理学部, 助教 (70635755)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 進化 / 社会性昆虫 |
Outline of Annual Research Achievements |
社会性カリバチのうちアシナガバチ亜科(Polistinae)では,新たなコロニーが創設される場合,2つの様式があることが知られている.1つは,女王(あるいは交尾済み雌個体)が単独あるいは複数個体で新コロニーを創設する「独立創設」である.もう一方は多数のワーカーが女王個体(おもに複数)を伴ってコロニーの創設をおこなう方法で「分巣」と呼ばれる.分巣はアシナガバチ亜科(25属約900種)では,複数回起源したと考えられており,南米のエピポナ族すべてと旧世界のPolybioides属全種,およびチビアシナガバチ属(Ropalidia属)で見られる.このうちチビアシナガバチ属内には1属内に「独立創設」種と「分巣」種の両方が含まれていることから,「分巣」の起源を探るうえで重要な分類群として注目されてきた. 本研究の目的は,1)「分巣」行動が進化したグループの特定, 2) ニューギニア・オーストラリア北部およびインド~小スンダ列島中部に分断した分布を示す分巣種の分断された分布の成立要因を明らかにすることである. 25年度までの研究から,チビアシナガバチ属における分巣行動は本属内において単独起源ではなく,東南アジア起源とニューギニア・オーストラリア起源である可能性が高いことが示された.これは,現在みられる分巣種の分断分布についても良く説明できる仮説であることから,国際学会において発表を行い,研究結果の積極的な発信につとめた.さらに,表形形質に使用する分巣行動や形態形質および外群に関する新たな知見を明らかにし,データをさらに充実させるとともに,成果について学会で発表を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
解析に使用するためのデータセットについては,26年度内にデータを集めほぼ完成に近づいた.また,分布地図の作成も始めている.さらに対象としている分類群や解析データセットの外群にあたる分類群について精査したところ,生態学的に新たな知見が発見されたり,また学名を変更する必要が生じたためその都度学会や学会誌に報告しており,表形形質の充実や精査も行っており,目的の達成には充分であると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
26年度までに揃わなかった分についてデータの保管を進めデータセットを完成し,完成したデータセットにもとづいて系統関係解析を行う.文献やデータベース等の情報の精査および既存標本の観察から,分巣種ごとの分布地図を作成する.種間系統関係仮説および分布情報から,チビアシナガバチ属における種分化および現在の分布が成立した分散過程について考察し,学会での発表および国際学会誌への投稿準備を行う.
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Causes of Carryover |
実験の一部について外部委託を予定していたが,学内の設備で行えることになったため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
不足している遺伝解析用試薬および遺伝解析用プラスチックの購入に充てる計画である.
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Research Products
(5 results)