2013 Fiscal Year Research-status Report
種間交雑が可能なタナゴ亜科魚類2種を用いた種分化の遺伝的メカニズムの解明
Project/Area Number |
25840145
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Osaka Medical College |
Principal Investigator |
橋口 康之 大阪医科大学, 医学部, 助教 (70436517)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 種分化 / 適応進化 / 魚類 / QTL解析 / 多型解析 |
Research Abstract |
本研究では、日本に分布する小型の淡水魚であるヤリタナゴTanakia lanceolataとアブラボテT. limbataの野外集団を対象に、適応進化や種分化の遺伝的機構の解明に向けて研究を進めている。本研究のおもな目的は(1)2種間の交配前隔離に関係する可能性がある種差の遺伝的基盤の特定、(2)野外集団で2種間に生殖隔離が成立するための条件の解明、の2つである。平成25年度は、2種の形質差の遺伝的基盤を同定するための遺伝学的解析(QTLマッピング、遺伝子発現解析)の手がかりとして、まず福岡県柳川市の生息地で2種のタナゴを採集し、種間F1雑種を人工的に作成した。現在10数個体のF1個体(ヤリタナゴ♀ × アブラボテ♂)を研究室で飼育している。今後、これらの個体からF2雑種を作成し、RADマーカーに基づく連鎖地図の作成およびQTL解析を行う予定である。また、複数(西日本の4地域)の異なる生息場所で2種を採集し、それらのDNAを抽出、標本を作成し、外部形態を測定した。さらに、ヤリタナゴ、アブラボテ各2個体ずつにおいて、次世代シーケンサーを用いて各個体の脳で発現する遺伝子の塩基配列を網羅的に決定した。この解析で得られた、2種それぞれで発現している遺伝子の塩基配列データは、2種間の遺伝的違いを明らかにする上で非常に有益な情報である。現在、このデータをもとに、2種を遺伝的に識別する複数の遺伝マーカーの作成を進めている。今後は作成した遺伝マーカーを用いて、各生息場所における2種の交雑率の推定を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現時点で、若干の順序変更があるものの、研究はおおむね順調に進展している。以下、申請書に記述した平成25年度の研究計画に基づいて記述する。 (1) ヤリタナゴ × アブラボテの交雑実験① F1雑種の作成:2種間のF1雑種については、その作成に成功し、現在11個体を研究室で飼育している。それらは性成熟を示しており、F2雑種の作成も引き続き可能な状態にある。 (2) ヤリタナゴ、アブラボテの形態測定:平成25年度には、西日本の異なる4箇所で2種を採集し、それらの標本を作製、外部形態の測定を行うことができた。また、作成したF1雑種の形態測定も引き続き行うことが可能である。 (3) ヤリタナゴ-アブラボテ2種を判別する分子マーカー(RADマーカー)の作成:この解析については、予定を変更し、RADマーカーの作成は平成26年度末~平成27年度始めに行うこととした。その理由としては、RAD解析は複数個体で同時に多数のSNPマーカーを得る方法であるため、今後作成予定のF2雑種を対象に解析を行うことで、連鎖地図の作製、QTL解析をより迅速に行うことが可能と判断したためである。その代わりに、平成25年度はヤリタナゴ・アブラボテ各種の脳で発現しているmRNAの塩基配列を、各種2個体ずつ、次世代シーケンサーを用いて網羅的に決定した。今後、この解析で得られた情報を用いることで、2種を識別する複数の遺伝マーカーを作成することが可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
ヤリタナゴ x アブラボテ F2雑種の作成:現在飼育中のF1雑種で人工授精を行い、F2雑種を作成、飼育する。F1雑種の個体数がやや少ない(11個体)ため、平成26年度も再び野外個体からF1雑種を作成し、研究室で飼育する。 遺伝学的解析:生育したF2雑種の形質を測定する。またF2雑種においてRADマーカーを作成・使用することで、連鎖地図を作製し、ヤリタナゴとアブラボテで異なる形質の遺伝的基盤の特定を目指す。具体的に調べたい形質として、体高/体長比、体長/体幅比、側線鱗数、体色、婚姻色の色彩および色彩パターン、鰭の形態、鰓耙数、腸の形態および相対的長さなどを考えている。また、種間F1雑種を用いた網羅的な遺伝子発現解析を行う。 タナゴ類野外集団における交雑率の調査:4-6箇所の異なる野外集団において、複数の遺伝マーカーを用いて2種間の交雑率を推定する。また生息環境の状況(水深、流速、河川形態、生息する二枚貝の種類、密度等)と交雑率の間に相関関係があるかどうか検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
経費はほぼ計画通りに使用したが、若干の未使用額が残った。無理に使用するより、次年度の研究で有効に使用する方が有益と判断したため、次年度に繰り越した。 次年度使用額は、請求した助成金と合わせて、主に物品費、旅費、人件費等に使用したいと考えている。
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Research Products
(1 results)