2014 Fiscal Year Research-status Report
南西諸島の沿岸生態系保全に向けた多重スケールにおける海産生物の動態解明
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25840152
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Research Institution | Okinawa Institute of Science and Technology Graduate University |
Principal Investigator |
中島 祐一 沖縄科学技術大学院大学, 海洋生態物理学ユニット, 研究員 (50581708)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 遺伝子流動 / 遺伝的多様性 / 隠蔽種 / マイクロサテライト / 南西諸島 / 保全遺伝学 |
Outline of Annual Research Achievements |
サンゴはサンゴ礁構成種として重要であるが、地球規模、地域規模の撹乱により生息が脅かされている。撹乱されたサンゴの回復には幼生加入が欠かせない。放卵放精型サンゴは長距離分散することが示唆されており、一般に遺伝的なコネクティビティも高いことが報告されている。南西諸島には425種ほどのサンゴが生息するが、そのうち遺伝的なコネクティビティが調べられているのはわずかである。アザミサンゴは雌雄異体の放卵放精型サンゴで、刺胞の形態で2つのタイプに分けられることが知られている。さらにこの刺胞タイプはミトコンドリアDNAタイプ(Lタイプ、Sタイプ)と関連していることが先行研究によりわかっている。本研究では、南西諸島のアザミサンゴの集団遺伝解析を行い、地点毎にミトコンドリアタイプの比、クローン多様度、遺伝的多様性、タイプ間の遺伝的分化、タイプ内の地点間コネクティビティを評価した。 17地点505群体のアザミサンゴのうち、300群体がLタイプ、205群体がSタイプであった。しかし、タイプの比は地点毎に大きく異なっていたが片方のタイプしかいない地点は1地点のみだった。また、300群体のLタイプのうち11群体は通常のLタイプとは異なるタイプだった。Lタイプ、Sタイプどちらのクローン多様度も地点毎に大きく異なっており、緯度との相関は見られなかった。LタイプSタイプどちらの遺伝的多様性も緯度が上がっても減少することはなく、高緯度でも維持されていることが示された。タイプ間で遺伝的分化が見られ、これまでの報告の通りタイプ間で種が異なることが考えられる。しかし、Lタイプの中で見つかった異なるタイプ(L+タイプと命名)が通常のLタイプやSタイプと大きく分化していた。タイプ内の遺伝的分化はタイプ間の分化に比べて低く、また地理的距離とFstの相関は見られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまで、造礁サンゴの2種、アザミサンゴとトゲサンゴにおいてマイクロサテライトマーカーを用いた集団遺伝学的研究を行ってきた。しかし、2013年8月に所属が変更となっており、現在も予定していた一部の研究が始められない状況にある。 南西諸島のサンゴ礁は環境悪化による撹乱を受けている。事前に採取捕獲許可を県に申請、取得したにもかかわらず、対象種がその場所から局所絶滅していたケースもあり、思い通りに試料採取ができないことも研究の進行を妨げる原因となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
無性生殖を行う生物種においては、個体の位置情報を記録して地点内集団遺伝構造、クローン構造を評価することが課題として重要である。研究計画では海草類を対象に地点内集団遺伝構造、クローン構造を把握する予定であったが、所属の変更により他研究グループとの兼ね合いで対象生物種の変更を余儀なくされた。したがって、今年度はサンゴにおけるクローン構造を評価するつもりである。
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Causes of Carryover |
計画に遅れが生じているため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
遅れが生じた分を合わせて研究を進める。
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Research Products
(2 results)