2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25840157
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
岡田 賢祐 岡山大学, その他の研究科, 助教 (40550299)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 生態 / 昆虫 |
Research Abstract |
本研究計画の大きな目的は以下である。生物体の構造や形は、複数形質が適応的に複合したものであり、いくつかの遺伝子で巧妙に制御されている。これまでその至近メカニズムに注目が集まり、体形の多様な進化とその適応的意義に焦点が当たっていない。本研究では、モデル甲虫を用い、実験的な選択によって生じる体形の進化と個体形質への影響を調べる。実験結果から、分子生物学的・量的遺伝学的知見を取り込んだ生態学的手法を駆使し、表現型から遺伝子レベルまでの情報を抽出し、複数形質の統合によって形成される体形の適応的意義を探る。 これまでの成果として、モデル甲虫として有用なオオツノコクヌストモドキを使用して、以下の研究展開をした。最初に生理学的研究から、体形の変化があるホルモン物質によって左右されることを特定した。またその変化によって、本種の行動が大きく変化することがわかった。その行動を具体的に上げると、闘争行動、分散行動、繁殖行動と歩行活動である。これら行動形質は本種の適応度に大きく寄与するものである。従って、体形は極めて強い選択を受けており、その結果、より適応度が高い体形に維持されていることが考えられる。 また量的遺伝学的解析から、本種の体形には遺伝的な基盤があり、また幼虫時の発育条件で投資配分も変化することがわかった。これら結果は国内外の学会等で高い評価を受け、一部は専門の国際誌に掲載されている。 以上の結果を踏まえて、現在ではオオツノで体形制御に関する候補遺伝子のホモログ遺伝子を探索している。探索した遺伝子の塩基配列の違いをシークエンス解析により明らかにする予定である。有意なアミノ酸配列が検出された遺伝子において、RNA干渉法を行い、体形の形成に関与するかを調査予定でもある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記に記したように、表現型及び遺伝子に関する体形のデータは蓄積されつつある。これは、当初の計画よりも進むペースが早い。さらに、Gene Bank検索等を用いて、体節や四肢形成に関係する遺伝子のホモログ遺伝子をオオツノで探索することに着手している。そしてオオツノからmRNA抽出およびcDNA作製し、オオツノで機能するそれぞれの遺伝子用のPCR primer作製することができる。候補遺伝子はwingless, decapentaplegic, distal-less, daschshund, aristaless, epidermal growth factor receptor, homothorax, extradenticleなどであり、網羅的に調査がすすんでおり、ある程度候補も絞れてきた。 候補遺伝子についてシークエンス解析を進めることが可能であり、有意なアミノ酸置換配列が検出された遺伝子については、RNA干渉法(RNAi)を行い、体形の形成に関与するかを調査できる。甲虫類ではlarval RNAi(幼虫体への二本鎖RNAのインジェクションによるRNAi法)が極めて有効である(伊藤ら2010, Tomoyasu et al. 2009)。クローニングした遺伝子についてlarval RNAi 法を用い、体形形成に関与する遺伝子のスクリーニングを行うこともできる。さらに、我々はオオツノにおいてホールマウントin situ hybridizarion法を確立し、遺伝子の発現部位の解析を行うことも準備が進みつつある。従って、来年度以降も計画に支障がなく、研究計画を進めることができる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、遺伝子解析を積極的に行うと同時に、すでに確立した体形が異なる系統を使用し、体形の進化とオスの繁殖や生態がどのように影響し合うかを調べる。申請者の先行研究によって(Okada & Miyatake 2009)、オスの闘争意欲に影響が及ぶことが分かっている。そこで神経線維の染色や脳内の神経伝達物質の測定など神経生理学的手法を使用し、体形変化による脳内の神経回路の修飾を調べる。また、飛翔能力、歩行活動や射精行動など、オスの適応度に関わる形質を網羅的に調べる。これら形質の測定法はすでに確立している。得られたデータから、表現型から内分泌・神経生理という複数レベルで、体形とオスの繁殖や生態の進化的な関係を明らかにする。さらに、今年度の「体形を制御する遺伝子」のスクリーニングデータを基に、二本鎖RNAの注射による受容体のノックダウンすることで、体形が変化した個体を作成する。この個体とコントロール処理の個体を比較して改変機能を確認する。この実験から、遺伝子レベルで体形の変化とオスの適応度に関わる形質がどのようにリンクしているかが明らかになる。 来年度は今年度の実験を引き続き行うとともに、得られた実験データの解析を行い、体形の進化の適応的意義と至近メカニズムを総合的に議論した上で、学会での成果発表及び一般科学学術誌に投稿を行う。
|