2015 Fiscal Year Annual Research Report
放射性炭素が解き明かす地下部食物網を駆動する炭素の滞留時間
Project/Area Number |
25840158
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
兵藤 不二夫 岡山大学, 異分野融合先端研究コア, 准教授 (70435535)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 食物網 / 食物年齢 / 放射性炭素 |
Outline of Annual Research Achievements |
陸上生態系の一次生産のほとんどは地上部食物網で消費されることなく、地下部(土壌)の食物網によって利用される。近年の研究から、地下部だけではなく地上部の消費者の多くが地下部由来の物質とエネルギーに依存している可能性が示されている。しかしながら、植物が炭素を固定してから消費者に利用されるまでどれくらいの時間がかかるのか炭素の滞留時間に関する知見はほとんどない。この食物網における炭素の滞留時間のことを私は食物年齢と定義づけ、冷戦期に大気圏核実験によって作られた放射性炭素を用いて推定が可能であることを既に示している。本研究では、異なる気候帯に属する森林に調査地を設定し、消費者やそれを支える土壌有機物を対象に放射性炭素分析から食物年齢を測定し、炭素の滞留時間を明らかにすることを目的とした。北海道大学苫小牧研究林の冷温帯林、真鶴半島自然公園の照葉樹林、琉球大学与那フィールドにおいて、植物や土壌節足動物などの消費者を採集した。また土壌も各調査地で採集し、栄養塩、土壌呼吸、リン脂質分析を行った。乾燥土壌は酸とアルカリ処理によって、酸不溶性画分、アルカリ不溶性画分に分けた。これら生物試料と土壌試料は封管法によって燃焼し、真空ラインにて二酸化炭素を精製した。その後、水素ガスと反応させることでグラファイトとし、外注分析によって放射性炭素濃度を求めた。現在解析中であるが、得られた結果は栄養塩濃度や土壌呼吸速度、リン脂質濃度や組成は調査地によって大きく異なることがわかった。また、土壌の放射性炭素濃度も大きく異なっていた。しかしながら、放射性炭素濃度から求めた土壌節足動物の食物年齢については、調査地間において顕著な差は見られなかった。このことは、各調査地で採集されたミミズの食物年齢に大きな差がないという先行研究で得られた結果と一致する。
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