2013 Fiscal Year Research-status Report
オランウータンの前肢における筋骨格モデル作成のための基盤研究
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25840171
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Nippon Veterinary and Life Science University |
Principal Investigator |
大石 元治 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 講師 (40549557)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | オランウータン / 懸垂運動 / 動作解析 / 筋束長 / PCSA |
Research Abstract |
本研究の目的の一つにオランウータンの動作分析がある。千葉県にある市川市動植物園の協力を得て、オランウータンの筋骨格モデル作成のために必要な動的パラメーターの計測のための予備的行動観察を開始した。まずは、同園で飼育されているオランウータンの行動パターンを明らかにして、最適な行動観察ポイントを決定するために、1日の放飼場での行動を観察した。放飼場全体を観察できる場所にビデオカメラを設置して行動を記録した。分析は動画をコマ送りで再生しながら、ポジショナル・ビヘイビアを37種類(ロコモーション, 19種類; ポスチャー, 18種類)、支持基体を5種類に分類して行動を記録した。これらのデータと、さらに三次元空間のキャリブレーションの方法も考慮して、オランウータンの懸垂運動が高頻度で認められ、動作解析に必要な距離が確保できる観察ポイントを決定した。また、キャリブレーションを行う際の問題点も明らかとなった。 オランウータンの動作分析と同時に筋骨格モデルに必要なオランウータンの筋パラメーター(筋重量、筋束長、PCSA)を入手した。また、比較対象であるチンパンジーの筋パラメーターについても入手した。これらの解剖結果については、第67回日本人類学会において報告した。 また、すでに入手済みであったオランウータンのCTデータを研究協力者が所有するソフトウェアと本研究課題において購入したソフトウェア(Rapidform)を使用し、前肢骨格のサーフェイスの作成、および不正データの修正を行った。筋パラメーターとともに骨格の三次元データを得ることができた。これらのデータは筋骨格モデルを作成する上で必要不可欠なものとなる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
オランウータンの行動を記録するためのビデオカメラの納品が予定されていた期日よりも約4ヶ月ほど延期されたため、行動解析の開始が遅れた。また、3次元空間のキャリブレーションが従来予定していた方法では問題が生じることが発覚し、改良が必要となり、現在のその対策を検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
申請の段階では海外での調査も視野に入れていたが研究費の減額があり、国内でのオランウータンの行動解析を推進することとする。現在、明らかになっている問題点として、行動解析を行う上での3次元空間のキャリブレーションの方法がある。本来、実験施設ではない動物園において動作解析を行う場合、キャリブレーションの方法が問題になる。しかし、市川市動物園の放飼場において行動観察を行う予定の場所では、組み立てられたパイプの大きな枠をオランウータンが移動するため、この枠をキャルブレーションに利用することが可能である。ただし、この枠に歪みが存在する可能性があるので、精度を上げるためにキャリブレーションを行うポイントを追加する予定である。また、同時にダイナミック・キャリブレーションも検討している。3次元空間のキャリブレーションは実験精度を決める重要な要因の一つであり、慎重に検討し可能な方法を動物園と協議していく。早期にキャリブレーションの問題を解決し、オランウータンの動作解析を行う。 現在、オランウータンの動作解析を行う上で、基礎的な情報となる市川市動植物園のオランウータンの行動パターンを把握するために1日のなかでの行動の分類を進めている。ビデオカメラの納品が遅れたため、現在のところ観察を行ったデータは、冬と春のみであるが、夏と秋のデータを加え、一年を通しての行動パターンに差の有無を検討する。 さらに、オランウータンと比較対象であるチンパンジーの解剖の機会があれば、筋パラメーターの入手を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の減額に伴う消耗品の購入量の調整を行い、若干の残高が生じた。 繰越金は本年度の消耗品の購入にあてる予定である。
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