2014 Fiscal Year Research-status Report
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25850005
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
渡邊 啓史 佐賀大学, 農学部, 講師 (40425541)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ダイズ / 開花期 / タンパク質間相互作用 / 遺伝子発現 |
Outline of Annual Research Achievements |
ダイズコアコレクションが示す開花期の遺伝的多様性に対して、ダイズにおける開花抑制因子であるE1遺伝子および、花成の最終的な誘導に関わると考えられるダイズフロリゲン遺伝子の発現量がどの程度関係しているかを明らかにするために、昨年度行った半定量PCRによる解析を再度、リアルタイムPCRを用いることで、より正確に評価を行った。コアコレクション80系統の明期開始1時間、2時間の葉から抽出したRNAを分析した結果、ダイズフロリゲン遺伝子と開花期との間には高い負の相関が認められた一方で、E1遺伝子の発現量と開花期の間には高い相関が認められなかった。ダイズの開花期はダイズフロリゲン遺伝子の発現量を介していることが強く示唆されたが、その制御に及ぼすE1遺伝子の寄与はダイズ全体の開花期の多様性に及ぼす影響は小さいと考えられた。しかしながらE1遺伝子の機能を解析するうえで、E1遺伝子の高発現系統は実験材料として有用であることが期待されることから、コアコレクション内のE1遺伝子高発現系統の選抜を行ったところ、九州で栽培されている一般的な晩生品種「フクユタカ」と比較して、2倍ないし3倍まで高いE1遺伝子の発現量を示す品種「アキセンゴク」や「球磨1号」等を見出した。これらの品種はこれまでに育成した遺伝子組み換えによるE1遺伝子高発現系統と比較すると、その発現量は低いものの、免疫沈降等の実験に利用できる可能性があると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の実施課題のうち、E1遺伝子の高発現系統の選抜については概ね順調な進捗が認められた。E1遺伝子の発現量を制御する遺伝子座を明らかにするための遺伝分析については、分離集団の育成が完了していることから、次年度の実施が可能であると見込まれる。一方、E1遺伝子の機能を分子レベルで明らかにする実験では、E1遺伝子高発現系統の選定に期間を要したことから、現在においても、免疫沈降を実施する実験条件の検討が中途の状況にある。そのため、進捗状況を「やや遅れている」とし。また、予算についても、次世代シークエンサーを利用した免疫沈降に係る外部受託に必要な予算を次年度に繰越した。上記の点について、実験期間の短縮を図るためにダイズに比べて世代期間の短い実験植物であるシロイヌナズナ等を利用して、細胞内におけるダイズ開花関連遺伝子の相互作用を解析できる実験系を利用することで、研究予定に対する遅延を最小限に留める。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度得られたE1遺伝子高発現系統である「アキセンゴク」とE1遺伝子の発現量の低い「エンレイ」に由来する交雑集団を利用して、E1遺伝子の発現量に対する遺伝的安定性について評価を行い、E1遺伝子の発現量を制御する遺伝子座の有無について検証する。また「アキセンゴク」、「球磨1号」等のE1遺伝子高発現系統について、E1遺伝子を検出する抗体を利用したウエスタンブロットによるE1タンパクの検出および、E1遺伝子が物理的に結合するDNA配列を免疫沈降法を用いた次世代シークエンス解析技術によって明らかにする。既存の開花関連遺伝子とE1遺伝子の関係を明らかにするために、E1遺伝子を恒常的に発現するアラビドプシスを利用して、下流で機能すると考えられるFT遺伝子のプロモーターをGUS等のレポーター遺伝子の上流に組み込んだコンストラクトを利用することで、E1の物理的な機能について明らかにする。
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Causes of Carryover |
本年度は、1)E1高発現系統に対する再現性の確認、2)高発現系統を利用した分離集団の育成、3)E1遺伝子の分子間相互作用を解析するための実験条件の検討および実施、の3点について解析を行う予定であった。上記の1)、2)については概ね予定通りの進捗が認められたが、3)については、E1遺伝子高発現系統の選定に時間を要したことから、E1遺伝子の機能解析に必要な実験条件の検討を実施することができなかったことが、予算の次年次における繰越しを生じた理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
E1タンパクが物理的にどのようなDNA配列を認識しているのかを明らかにするために、次世代シークエンサーを用いた解析を実施する予定でいる。次世代シークエンサーの利用した解析には外部委託の予定であり、繰越金の大部分は予備実験に必要な実験と外部委託に使用する。
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