2015 Fiscal Year Research-status Report
ジベレリン欠損変異が関与するバレイショの収量性及び栽培化過程の解明
Project/Area Number |
25850008
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
浅野 賢治 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 北海道農業研究センター畑作物開発利用研究領域, 研究員 (80547034)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | バレイショ / ジベレリン / 矮性 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までに国内の主要品種であるコナフブキを利用した同座性検定の結果から、コナフブキがga1と同座の矮性遺伝子を有することが明らかとなった。また、ジベレリン合成遺伝子近傍に位置するSSRマーカーを用いた連鎖解析の結果、1つのGA合成酵素遺伝子近傍に位置するSSRマーカーの遺伝子型と表現型の間に強い連鎖を見出した。そのGA合成酵素遺伝子に矮性個体とコナフブキの間で4ヶ所の非同義置換を見出したが、その変異は矮性変異の原因ではないと考えられた。 本年は、未解析であったGA合成遺伝子のエキソン領域の塩基配列の解析を進め、全てのエキソン領域の塩基配列を決定した。その結果新たに1ヶ所の非同義置換を見出した。しかしながら、この非同義置換についても、矮性個体では全てこれらの変異をホモ型で有していたが、正常個体でもホモ型に有している個体があり、この変異も原因の変異ではないことが明らかとなった。そのためプロモーター領域やイントロン領域への変異が原因であると考え、それらの領域の解析を行った。その結果、矮性個体ではプロモーター領域にPCRが増幅しない領域が見つかり、その領域に大きな挿入や欠失があると考えられた。また、2つのイントロンに矮性個体で数10bpの挿入や欠失があることが明らかとなった。しかしながらこれらのプロモーターやイントロンへの変異も矮性個体ではホモ型であったが、正常個体でもホモ型に有しているものがあり、これらの変異も矮性変異の原因ではないと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
矮性変異体の塩基配列の解析から、複数の非同義置換やプロモーター及びイントロンへの変異を見出したものの、これらの変異が矮性変異の原因ではないことが明らかになった。いずれの変異も全ての矮性個体ではホモ型であることから、現在解析中の遺伝子が原因である可能性は高いと考えているが、アミノ酸置換や大きな挿入/欠損が原因では無いと考えられ、原因の変異特定に時間を要している。
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Strategy for Future Research Activity |
候補遺伝子の非同義置換は原因ではないと考えられたため、遺伝子発現に差があると考えられる。そのため矮性個体と正常個体の間で遺伝子発現量を比較する。当初計画では矮性個体の原因変異を見出し、主要品種等における変異の分布を調査する計画であったが、原因の変異が見出せない場合は計画を変更せざるを得ない。矮性個体と正常個体との間で候補遺伝子の発現量に明確な差が見られた場合は、いくつかの品種で候補遺伝子の発現量の比較を行い、収量性や茎長との関係を解析する。
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Causes of Carryover |
原因の変異の特定が終了せず、主要品種等における変異の分布調査など詳細な解析を行えなかった。また、バレイショの新規病害発生の対応のため、本課題遂行が遅延した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は、遺伝子発現の差が原因であると仮定し、遺伝子発現解析を実施する。また、遺伝子発現に明確な差が見られた場合はいくつかの品種での発現量の比較を実施する予定である。助成金は遺伝子発現のための分子生物学実験用の試薬に使用する他、植物体を育成するための圃場資材や実験及び圃場作業補助の人件費として使用する。
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