2013 Fiscal Year Research-status Report
根寄生雑草ストライガの宿主養水分収奪戦略におけるアブシジン酸の重要性の解明
Project/Area Number |
25850011
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
井上 知恵 鳥取大学, 乾燥地研究センター, 研究員 (30403380)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ソルガム / ストライガ / Striga hermonthica / アブシジン酸 / 根寄生雑草 |
Research Abstract |
根寄生雑草ストライガは、ソルガムやミレットに寄生することからアフリカの乾燥地の作物生産に多大な被害を及ぼしている。これまでの研究で、気孔応答に関わるアブシジン酸(ABA)濃度は、宿主のソルガムよりもストライガでは約10倍も高く、ストライガの寄生によりソルガムで増加することが分かった。ストライガ自身がABAを合成し、宿主へ輸送することにより宿主からの養水分収奪に関わる蒸散流を能動的に制御している可能性がある。 そこで本年度は、ポットおよびライゾトロンで栽培した個体を用いて、ストライガの葉にd6-ABAを処理し、4時間後にソルガムの葉をサンプリングしてd6-ABAが輸送されているかどうかを調べた。ライゾトロンでは3個体中0個体、ポットでは12個体中4個体でソルガムの葉からd6-ABAが検出された。ストライガとソルガム間のABAの輸送については、今後、d6-ABAの処理時期やサンプリング時期等を検討し、さらに調査する必要がある。 また、ライゾトロンで栽培した個体にポットと同様の水ストレスをかけるための潅水量について調査した。ライゾトロンで培地に用いたロックウールは13倍(g/g)水を含むことができた。ライゾトロンの水量がロックウールの乾物重の5倍を下回ると、ソルガムの気孔コンダクタンスは減少した。また、水量がロックウールの乾物重の1倍になると、水ストレスが強くかかりすぎ、完全に葉が巻いてしまった。この結果から、処理区の水分量は、湿潤区ではロックウールに対し5-13倍、乾燥区では1-5倍の範囲とすることとした。なお、本年度はライゾトロンで栽培したソルガムとストライガの気孔応答やABAの測定を計画していたが、ストライガの寄生率が悪く、測定に用いる個体を得ることができなかった。来年度はストライガの接種率を上げ、過剰に寄生が生じた際には間引くことで調整を行いたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はライゾトロンで栽培したソルガムとストライガの気孔応答やABAの測定を計画していたが、ストライガの寄生率が悪く、測定に用いる個体を得ることができず、培地の水分レベルの決定までしか行うことができなかった。 しかし、来年度以降に調査予定であったd6-ABAを用いたトレーサー実験の予備実験を行い、サンプルの一部でd6-ABAが検出されたことから、今後のトレーサー実験での処理時期やサンプリング時期を決める上で必要な情報を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
ライゾトロンで栽培したソルガムとストライガに水分処理(湿潤区、乾燥区)を行い、気孔応答やABA濃度を測定する。また、ライゾトロンで栽培したソルガムとストライガを用いて、ストライガにd6-ABA処理を行い、ストライガの寄生によりソルガムで増加するABAがストライガ由来であるかどうかを検討する。さらに、寒天培地で栽培したストライガ独立個体を用いて、培地の異なる浸透圧ストレスおよび光環境がストライガのABA濃度に与える影響について調査する。さらに、寄生関係にあるストライガとソルガム、ストライガ独立個体の水耕栽培法の確立に取り組む。
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