2013 Fiscal Year Research-status Report
ウイルス感染による宿主植物の発生プログラムかく乱機構の解明
Project/Area Number |
25850030
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Iwate Biotechnology Research Center |
Principal Investigator |
厚見 剛 公益財団法人岩手生物工学研究センター, 生命科学研究部, 研究員 (90547217)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 植物ウイルス / 病徴 / 形態形成 / 木質細胞 / 植物ホルモン / 二次細胞壁 / 核局在 |
Research Abstract |
ウイルスベクターでリンドウこぶ症関連ウイルスがコードするGK32タンパク質を発現させたNicotiana benthamianaは、リンドウこぶ症と同様に、茎皮層において木質細胞が異常に分化する。さらに、葉裏面の葉脈に沿った葉状組織の新生が見られる。今年度は、デキサメタゾン(DEX)誘導型プロモーターでGK32の発現を制御したN. benthamiana形質転換体を作成し、形態異常を示す系統を得た。また、リンドウにおいて恒常的発現形質転換体を作成し、腫瘍状組織や葉状組織が異常分化する系統を得た。さらに、シロイヌナズナにおいてDEX誘導型形質転換体を作成し、形態異常を示す系統を得た。 シロイヌナズナGK32発現形質転換体を用いて、DEX処理後、経時的に宿主の遺伝子発現解析をした。各種ホルモン応答遺伝子の発現をリアルタイムPCRで解析した結果、サイトカイニン経路が顕著に低下し、ブラシノステロイド経路が活性化することを明らかにした。木質細胞を構成する二次細胞壁形成のマスターレギュレータである転写因子VND6・VND7・NST1・NST2・SND1の発現変化を調べた結果、VND6・NST1・NST2の発現量が上昇することを明らかにした。 共焦点顕微鏡でYFP融合GK32タンパク質の細胞内局在を観察し、核内で顆粒状や板状の構造体を作ることを明らかにした。また、GK32タンパク質はNucleolinと共局在し、核小体に局在することを明らかにした。Cajal bodyのマーカータンパク質、SmB・SmD3・Coilinの局在と比較した結果、SmB・SmD3と共局在した。SmB・SmD3はmRNAスプライシングの因子である。そこで、他のスプライシング因子、U1-70K・U2B”・SRタンパク質と局在を比較した結果、U1-70K・U2B”と共局在することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画ではN.benthamianaを用いて、GK32タンパク質の作用機構を解析する予定であった。しかし、シロイヌナズナにおいても形態異常を誘導することが明らかとなったため、シロイヌナズナを中心に用いて解析している。シロイヌナズナでは、それぞれのホルモン応答遺伝子や二次細胞壁形成を制御する転写因子が既に複数わかっており、サイトカイニンやブラシノステロイドの経路が活性化していること、二次細胞壁形成を制御する転写因子VND6、NST1、NST2の発現が上昇していることを明らかにすることができた。これにより、GK32タンパク質の発現により、木質細胞の分化が誘導されることを遺伝子レベルで示すことができた。 細胞内局在解析から、GK32タンパク質は核で機能することが示唆された。また、SmB・SmD3・U1-70K・U2B”などのmRNAスプライシング因子と共局在することを明らかにした。作用機構を明らかにする上で、重要な知見が得られた。 シロイヌナズナがモデル系として利用できると考え、酵母ツーハイブリッド法、共免疫沈降法について、シロイヌナズナを材料として用いることとした。このことにより、迅速に標的遺伝子が単離でき、その機能解析が進むことが期待できる。また、EMS処理による変異体スクリーニングが可能となり、GK32タンパク質と相互作用する因子や形態異常に至るシグナル伝達系の同定に向けて、大きな進展があったと考えている。 以上から、本研究の目的である、リンドウこぶ症発症機構の解明に向けて、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、シロイヌナズナGK32発現形質転換体を利用し、DEX処理後の経時的なトランスクリプトーム解析を行い、変動のある宿主のシグナル伝達経路を網羅的に同定する予定である。 GK32がターゲットにする宿主因子を、シロイヌナズナを用い、酵母ツーハイブリッド法および共免疫沈降法で探索する予定である。後者では、まずは局在情報を考慮し、核を単離して、核タンパク質をターゲットにして探索する。また、相互作用因子および形態異常に至るシグナル経路を同定するために、GK32発現シロイヌナズナ形質転換体に、EMSで変異を導入し、形態異常が生じない復帰変異体の探索をしている。既に復帰変異体を複数系統得ており、原因遺伝子の同定を進めている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の計画ではN. benthamianaを用いて、GK32タンパク質の作用機構を解析する予定であった。しかし、シロイヌナズナにおいても形態異常を誘導することが明らかとなり、その後の解析を考慮した場合、遺伝子情報やリソースが充実したシロイヌナズナで研究を進めるのが妥当だと判断した。その結果、形質転換体などの材料の準備や、予備実験に時間を要したため、トランスクリプトーム解析やホルモン解析を平成25年度内に終えることができなかった。よって、その費用は平成26年度に繰り越すこととした。 繰り越し分は、トランスクリプトーム解析(マイクロアレイ解析など)やホルモン解析の費用として支出する予定である。
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Research Products
(4 results)