2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25850032
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | National Institute of Agrobiological Sciences |
Principal Investigator |
石橋 和大 独立行政法人農業生物資源研究所, 植物・微生物間相互作用研究ユニット, 研究員 (20611742)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | マイナス鎖RNAウイルス / 逆遺伝学 / イネ縞葉枯ウイルス / トマト黄化えそウイルス |
Research Abstract |
植物のマイナス鎖RNAウイルスは,遺伝子操作実験系が確立されておらず,増殖過程には未解明の点が多い.本研究は,イネ縞葉枯ウイルス(RSV)の粒子(RNP)を再構築することにより,RSVの遺伝子操作実験系の確立を目指す.この系ができれば,ウイルス遺伝子の機能解析が容易になり,マイナス鎖RNAウイルスの増殖サイクルについての理解が深まるとともに,新規ウイルス防除策の構築に向けた第一歩となることが期待できる. これまでにRSV RNPの構成因子であるヌクレオキャプシドタンパク質およびRNAポリメラーゼを活性を有する精製タンパク質として得ることができた.感染性を有するRNPの再構築を目指して,これらのタンパク質とウイルスRNAを様々な条件で混合した.二価陽イオンの種類や濃度によりウイルスRNAポリメラーゼの活性は大きく変化したが,残念ながらウイルス粒子がもつ「全長RNAを複製する活性」を試験管内再構築RNPで検出するには至らなかった.また,混合物を宿主植物に接種しても感染性を示さなかった. 一方で,細胞内で二つのタンパク質とウイルスのレプリコンRNAを発現することにより,RNPを再構築することも試みた.RSVでは現在のところポジティブな結果は得られていないが,RSVと近縁のトマト黄化えそウイルスについて出芽酵母細胞内で同様の実験系を用いた時にウイルスレプリコンに由来することが強く期待できる遺伝子発現が観察された.遺伝子発現が起こる細胞の頻度が数千細胞に一個程度と著しく低いため,今後実験系の大幅改良が必要と考えるが,マイナス鎖RNAウイルスの遺伝子操作実験系の開発に向けた大きな一歩を踏み出せた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
RSVでは現在のところうまくいっていないが,近縁のトマト黄化えそウイルスにおいて活性を有するRNPの構築とそれに伴う遺伝子発現が期待できる結果が得られている.植物マイナス鎖RNAウイルス逆遺伝学実験系の開発という大きな目標にむけて,着実に前進している.
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Strategy for Future Research Activity |
目的であるウイルスの遺伝子操作を行うには,レポーター遺伝子を用いることなく,ウイルスそのものの配列で再構築RNPを得る必要がある.そこで現在数千個に1個程度である遺伝子発現成功頻度の向上を目指す.そこで,ベクター等の改良を進めるとともに,宿主遺伝子型の改変(RNA代謝経路への変異導入)等を行う.ある程度の向上が見られたら,ウイルスそのものの配列をもつレプリコン(3分節それぞれについて)を用いて酵母細胞内でRNPを形成させ,ここから抽出したRNPを植物に接種して感染性を確認する. また,RSVについても同様の実験系の構築を試みる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初計画においては,25年度のほとんどを試験管内RNP再構築に費やす予定であり,そこで必要となるアイソトープ試薬等の費用を計上していた.一方,実際には,比較的試薬代のかからない出芽酵母細胞を用いた実験系で良い結果が得られたため,こちらに研究の重心を移したことから,消耗品代の余剰が生じた. 26年度は,出芽酵母内で構築したRNPを抽出し,その活性を測定する実験等を多く行うことが見込まれるため,アイソトープ試薬等の消耗品代が当初予定以上に必要になる.そこで25年度分の余剰をこれにあてる.
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