2013 Fiscal Year Research-status Report
時系列Dual RNA-Seq法によるイネといもち病菌の感染時相互作用の解析
Project/Area Number |
25850033
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | National Institute of Agrobiological Sciences |
Principal Investigator |
川原 善浩 独立行政法人農業生物資源研究所, ゲノムインフォマティクスユニット, 任期付研究員 (30546370)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 植物ー病原体相互作用 / RNA-Seq解析 / de novoゲノムアセンブル解析 |
Research Abstract |
平成25年度はいもち病菌(P91-15B)のゲノム解読とイネいもち病菌感染サンプルの調製、RNA-Seqシーケンシングを行った。いもち病菌のゲノム解読については、胞子からDNAを抽出し、MiSeqを用いて、ゲノムシーケンシング解析(PE, 250bp)を行った。シーケンサーの不具合などもあり、予定より多く、3ラン分のシーケンシングを行った結果、リファレンス株(70-15)のゲノムサイズ(41Mbp)の100倍以上の塩基配列情報を取得した。配列の前処理を行った後、MaSuRCA等のアセンブルプログラムを用いてde novoアセンブルを行い、約3,000本のスキャフォールド配列を得た。アセンブル結果のN50は約50kbで、総塩基量は約42Mbpとリファレンス株とほぼ同等であった。一方のRNA-Seq解析については、抵抗性反応の異なる3系統のコシヒカリの葉身に対して、いもち病菌の胞子懸濁液を噴霧接種し、接種前、接種後24、36、48時間の4つの感染ステージにおけるイネ葉身のサンプリングを行った。この時、各サンプルについて生物学的反復2回を行い、蒸留水を噴霧したコントロールサンプルも同時に得た。抽出したトータルRNAとイルミナ社のキットを用いてRNA-Seqライブラリを調製し、イルミナ社のHiSeq2000を用いてシーケンシング(PE, 100bp)を行った。これらと並行して、Dual RNA-Seq解析フローの開発も進めており、前処理、リファレンスゲノムへのアラインメント、遺伝子発現量の取得までの部分の開発を完了した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
いもち病菌のゲノムアセンブルについてはシーケンシングとアセンブル解析はほぼ完了し、すでにRNA-Seq解析のリファレンスとして利用可能な状態になっている。また、RNA-Seqのサンプリングについても順調に完了しており、予備用のサンプルも含めて計画していたサンプルは全て得られている。全サンプルについて、RNA抽出とRNA-Seqライブラリ構築を完了しており、RNA-Seqシーケンシングについてもひと通り行った。反復実験を足し合わせると、感染サンプルについてはそれぞれ6千8百万ペア以上の配列情報が得られており、当初の計画にある各サンプル「7千万ペア以上」という目標値をほぼ達成している。以上の理由から、ゲノム解析、RNA-Seq解析ともにおおむね計画通り、順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
いもち病菌ゲノムについては、RNA-Seq情報も活用しながら、精確な遺伝子構造の予測と機能情報の付与を行い、Dual RNA_Seq解析に活用する。Dual RNA-Seq解析については、得られたリファレンスゲノム配列とRNA-Seqデータを用いて、開発中のDual RNA-Seq解析フローによって時系列遺伝子発現解析を行う。ここで、リード情報が不足していると思われるサンプルについては、すみやかに追加シーケンシングを行い、解析精度の向上を図る。得られたイネといもち病菌双方の時系列遺伝子発現データを用いて、感染タイムコースに沿って発現変動、共発現する遺伝子を同定し、ゲノム配列、遺伝子情報などと合わせてデータベースとして公開する。さらに、イネといもち病菌の双方の時系列遺伝子発現プロファイルを比較することで、抵抗性反応の違いがイネトランスクリプトームにどのように表れているのか、また、異なる抵抗性を示すイネに対していもち病菌トランスクリプトームがどのような応答を表しているかを詳細に解析する。具体的には抵抗性反応の違いに応じて、イネやいもち病菌が発現遺伝子のレパートリーを変えているのか、それとも発現量や発現のタイミングを変化させているかを調べ、いもち病菌とイネがそれぞれの「武器」と「防御機構」をどう駆使して相互作用しているのかを明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の平成25年度計画では、RNA-Seqデータ解析を行ったのちに、リード数が不足しているサンプルについて追加シーケンシングを行って再解析する、という流れを何度か繰り返し、解析結果の精度向上を図る予定であった。しかしながら、業者の都合により、外注したRNA-Seqシーケンシングの発注から納品までの期間が予定していた以上に長くなり、複数回のシーケンシングを行うことができず、その結果として次年度使用額が生じた。 平成26年度にRNA-Seqデータ解析を進めていく中で、リード数が不足していると思われるサンプルがあった場合には、今回生じた次年度使用額を用いて、早急に追加シーケンシングを外注し、その結果を加えてさらなる解析精度向上を図ることを計画している。
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