2014 Fiscal Year Research-status Report
重窒素トレーサー法を用いた田畑輪換体系における有機物由来窒素動態の定量的評価
Project/Area Number |
25850042
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Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
高階 史章 秋田県立大学, 生物資源科学部, 助教 (30451420)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 田畑輪換 / 窒素動態 / 土壌窒素肥沃度 / 重窒素 / 水稲 / ダイズ |
Outline of Annual Research Achievements |
水稲とダイズを交互に作付けする田畑輪換圃場での土壌窒素肥沃度保全のため、堆肥や緑肥などの有機物の積極的な施用が求められている。圃場に施用された有機物由来窒素の一部は土壌に残存するため、その動態は複数年にわたり評価する必要があるが、田畑輪換体系ではそのような評価例はまだ無い。本研究では、田畑輪換体系における有機物由来窒素の動態を重窒素トレーサー法によりフィールドレベルで明らかにし、土性及び有機物のタイプがその動態に及ぼす影響を解析することを目的としている。 本試験では、水稲-ダイズを一年交互で繰り返す田畑輪換を想定し、異なる土壌タイプ(灰色低地土及びグライ土)及び輪換順序(水稲-ダイズ及びダイズ-水稲)において、1作目に重窒素標識した牛ふん堆肥、緑肥ヘアリーベッチ(HV)、化学肥料(硫安)を施用し、田畑輪換体系における有機質資材由来窒素の経年動態を追跡している。本年度までに得られた、施用から3年間の各資材の窒素動態は次の通りである。 (1) イネ―ダイズ1年交互の田畑輪換体系における有機質資材の窒素動態を3年間追跡し3作目の土壌を分析した結果、田時施用のHV由来窒素は27~46%、堆肥由来窒素は63~90%、畑時施用のHV由来窒素は46~61%、堆肥由来窒素は62~75%が土壌に残存していたことが明らかになった。(2) 1作後の土壌に残存した有機質資材由来窒素は、2年目以降も作物に毎年利用され続け、3作目の累計でHV由来窒素は30~40%、堆肥由来窒素は5~9%が作物に利用されており、特にイネでの吸収率が高かった。(3) 有機質資材を3年連用した場合、3作目のイネは1作目及び2作目に施用した有機質資材由来窒素を合計で1.0 g N m-2程度吸収したと見積もられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の主題である田畑輪換体系における有機物由来窒素の動態については試験が順調に遂行され、有機物施用3年目までの窒素動態が明らかになっている。本年度は有機物を連用した場合の資材由来窒素吸収量の見積もりについても成果が得られている。本成果は田畑輪換体系では初となる貴重なデータであり、研究目的の達成度は高いと判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
水田に比べて有機物分解が進みやすく未回収が多くなると考えられた畑地においても、有機物由来窒素の土壌残存率が高かった。今後は、4年目以降の窒素動態を引き続き追跡するとともに、土壌中の窒素の残存形態の解明を重点的に推進していく。
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Causes of Carryover |
前年度からの繰り越しに加え、研究計画の修正により、消耗品費・旅費及び謝金に残額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰り越し分については次年度の助成金とあわせて実験補助要員の人件費・謝金に充て、研究のさらなる進展を図る。
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