2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25850047
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
金 鋒杰 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (70400736)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 麹菌 / 菌核 / 有性生殖 / 転写因子 |
Research Abstract |
麹菌Aspergillus oryzaeは、日本酒、醤油、味噌などの醸造食品産業においてきわめて重要な微生物である。しかし、A. oryzaeは有性生活環をもたない不完全菌とされており、学術および産業上の利用に大きな制約となっている。本研究では、A. oryzaeの有性世代を発見することを目指し、産業上利用できる優良株の育種の効率化を図る。 菌核は有性生殖を行う器官であるが、麹菌ではその形成効率が低い。そこで、以前の研究では、研究代表者が初めて発見した転写因子SclRが菌核形成を正に制御し、もう一つの転写因子EcdRが負に制御することを明らかにした。また、これまでにA. oryzaeはヘテロタリックな有性生殖を行うことが強く示唆されており、有性生殖には接合型の異なる2株(MAT1-1型、MAT1-2型)が必要である。本年度は、有性生殖による遺伝子型の分離を見分けるため、一方の株にはウリジン/ウラシル要求性を付与し、かつ赤色蛍光タンパク質mDsRedで可視化、もう一方の株にはアデニン要求性を付与し、かつ緑色蛍光タンパク質EGFPで可視化した株を作製した。さらに、上記の株においてsclR遺伝子の過剰発現株、あるいはecdR遺伝子の破壊株を作製した。2つの接合型株を寒天培地上で対峙培養し、境界線上での菌核形成を解析した。その結果、sclR遺伝子の過剰発現株、あるいはecdR遺伝子の破壊株両方とも、コロニー間の境界線において菌核形成能が明らかに増加していた。 一方で、菌核形成を制御する転写因子SclRとEcdRを初めて同定したが、これらの機能解明はまだ進んでいない。本研究では、sclR遺伝子の過剰発現株、あるいはecdR遺伝子の破壊株についてDNAマイクロアレイ解析を行い、SclRとEcdRに依存して発現が変動する遺伝子を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
A. oryzaeの接合型の異なる2株(MAT1-1型、MAT1-2型)にsclR遺伝子の過剰発現株、あるいはecdR遺伝子の破壊株を作製し、対峙培養において境界線上での菌核の形成が増加していることが確認された。また、異なる栄養要求性、および異なる蛍光タンパク質によって標識した株を作製したことで、有性胞子における遺伝子型の分離比の解析により、有性生殖が起こったかどうかを確認することが可能になった。 また、sclR遺伝子の過剰発現株、あるいはecdR遺伝子の破壊株に関してDNAマイクロアレイ解析を行い、SclRとEcdRが制御する遺伝子をスクリーニングした。sclR遺伝子過剰発現株ではコントロール株と比較して、1507個の遺伝子において発現量が4倍以上変化し、ecdR遺伝子破壊株では948個の遺伝子において発現量が4倍以上変動していることが分かった。また、2つの株に共通で4倍以上変動している遺伝子が556個あったことから、SclRとEcdRは深い関連性があることが明らかになった。しかし、有性生殖に関連する遺伝子の発現に関しては大きな変動はなかった。以上の結果から、平成26年度には、これら有性生殖関連遺伝子を過剰発現することにより、菌核内の有性胞子の形成が促進されるかを検討することができる 以上のことにより、当初の計画通りの進展となる成果が得られ、平成26年度に予定している研究が実行可能になった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の推進方策については、大きな変更や課題はない。今後は、SclRとEcdRに制御される遺伝子の機能解析を行うとともに、A. oryzaeの有性生殖実験を行い、A. oryzaeでまだ見つかっていない有性世代を発見することを目指している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
学会発表のための旅費を他の予算で補てんしたため、当初計画していた旅費を使用しなかった。 生じた次年度使用額は、研究の進捗を踏まえて、実験で必要になった試薬・器具類の購入に重点的に充てることを計画している。
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Research Products
(6 results)