2013 Fiscal Year Research-status Report
有用物質産生へ向けたATP依存型リガーゼの構造機能研究
Project/Area Number |
25850050
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
宮永 顕正 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (10623126)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 微生物酵素 / 結晶構造解析 / 生合成 |
Research Abstract |
本研究では、放線菌が生産する有用な生理活性を示すマクロラクタム化合物について、その特徴ある基本骨格の構築に重要なATP依存型リガーゼの機能解析と構造解析を行った。まず、抗腫瘍性マクロラクタム化合物であるビセニスタチン生合成に関わるVinNについて、その特異なbetaアミノ酸認識機構を明らかにすべく、結晶構造解析を試みた。種々検討の結果、VinNのN末ドメインの結晶が得られたので、放射光施設においてX線回折データを収集し、VinNのN末ドメインの結晶構造を決定した。その後、betaアミノ酸基質である3-メチルアスパラギン酸との複合体についても構造決定した。これら結晶構造に基づき、基質認識に関わると考えられるいくつかの残基の変異体を作製し、解析を行ったところ、betaアミノ酸として認識するために必要な残基を特定することができた。現在、この構造を元に、基質特異性の変換を試みている。また、アミド結合を形成するという特異な機能を示すVinMについても結晶化を試みたが、現時点では結晶化に成功していない。他のマクロラクタム化合物の生合成機構の解析も進めた。抗真菌活性を有するヒタチマイシンの生合成遺伝子クラスターを同定し、そのスターターユニットの構築に関わる酵素の機能解析を行った。その結果、ヒタチマイシン生合成経路においてもビセニスタチン生合成経路と同様に二種類のATP依存型リガーゼであるHitNとHitMが関わることが明らかになった。機能解析の結果、HitNは本来の基質と考えられるbetaフェニルアラニンに加え、様々な鎖長の3-アミノ脂肪酸についても基質とするという寛容な基質特異性を示すことが明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定であるVinNの結晶構造解析に成功し、VinNの特異なbetaアミノ酸認識機構を明らかにすることができた。また、VinMの結晶構造解析についてはまだ結晶が得られていないが、阻害剤を合成して、現在共結晶化を試みている。新たな研究対象としている化合物ヒタチマイシンについては、その生合成遺伝子クラスターを取得でき、生合成酵素の機能解析が順調に進んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続き、ビセニスタチン生合成に関わるVinMの結晶化を試みる。また、その特異なアミド結合形成機構について知見を得ることを目的として、変異解析も行う。また、他のマクロラクタム化合物の生合成に関わるVinN型酵素は基質特異性がVinNとは異なっていると考えられるため、これらの構造解析、機能の比較解析を行うことにより、構造や配列と基質特異性との間の相関関係について知見を得る。これらの結果をもとに、基質特異性の改変を試みる。 現在までにいくつかのマクロラクタム化合物の生合成機構を明らかにすることができたので、これらのスターター部位が入れ替わった非天然型抗生物質の創製にも取り組む。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
VinNとVinMの結晶構造解析を同時に進めていたが、予想以上に早くVinNの結晶構造解析に成功したため、初年度はVinNの基質認識機構の解明に重点を置き、研究を進めた。これに伴って、必要経費についても変更が生じ、その結果として次年度への研究費繰越が生じた。 次年度は、結晶構造解析、変異体酵素の作製と解析、生合成工学によるマクロラクタム化合物類縁体の創製に取り組む予定であり、研究費の大半は試薬やキット類など消耗品購入のための物品費に充てる。また、次年度には複数の学会への参加と成果報告を予定しており、研究費の一部を旅費に充てる予定である。
|
Research Products
(5 results)