2014 Fiscal Year Research-status Report
エルゴチオネイン代謝酵素群の分子機能、立体構造および生理機能の解析
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25850052
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
村松 久司 高知大学, 教育研究部総合科学系, 准教授 (90437343)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | エルゴチオネイン / Burkholderia |
Outline of Annual Research Achievements |
エルゴチオネインは一部の細菌や真菌が生産する抗酸化能を持つアミノ酸類縁体であり、哺乳類や植物にも広く見出され、様々な生物におけるエルゴチオネインの生理機能や代謝様式が注目されている。 Burkholderia sp. HME13のエルゴチオナーゼ遺伝子の上流に位置し、Pseudomonas putida由来のウロカナーゼのアミノ酸配列と相同性を持つタンパク質をコードする遺伝子をpSE420Uに連結した。構築したプラスミドでEscherichia coli JM109を形質転換して、目的の酵素を精製した。チオールウロカニン酸を含む溶液に精製酵素を加えて30℃で加温した後、反応液をLC/MSに供して反応生成物を分析したところ、本酵素はチオールウロカニン酸ヒドラターゼ活性を持つと考えられた。 Burkholderia sp. HME13のエルゴチオナーゼ遺伝子とチオールウロカニン酸ヒドラターゼ遺伝子を含む約10kbの塩基配列を解読した。解読した領域にはエルゴチオネイン分解経路の第3段階以降を触媒すると推定される酵素遺伝子やエルゴチオネインの輸送に関与すると推定される遺伝子などが含まれていた。 放線菌を由来とし、エルゴチオネインの生合成に関与すると考えられた5種類の遺伝子をそれぞれPCRで増幅してpET21(a)に連結して、大腸菌発現系を構築した。このうち1種類のみ可溶性タンパク質として発現させることができたので、Ni-NTAカラムで目的酵素を精製し、触媒機能を調べたところ、S-アデノシル-L-メチオニンのメチル基をL-ヒスチジンに転移する反応を触媒すると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
エルゴチオネイン分解経路の第2段階を触媒するのはチオールウロカニン酸ヒドラターゼであることが明らかになり、第3段階以降を触媒すると推定される酵素遺伝子の塩基配列も明らかにできたため、エルゴチオネイン分解に関与する酵素群の機能解析はおおむね計画通りに進んでいるが、結晶化条件は決定できておらず、構造解析は実施できなかった。また、エルゴチオネイン生合成および分解経路に関与する全酵素の取得には至っておらず、エルゴチオネイン代謝経路のin vitro再構成実験は実施できなかった。また、放線菌においてエルゴチオネイン生合成に関与すると推定される5種類の酵素のうち4種類の酵素については可溶性タンパク質として発現せず、機能不明であり、エルゴチオネインの生理機能に関する研究を実施できなかった。 エルゴチオネイン分解経路に関与する酵素の機能解析については、おおむね予定通りに進んでいるが、結晶構造解析、エルゴチオネインの生理機能に関する研究が計画より遅れているため、研究全体としては当初の計画よりやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
できるかぎり当初の研究計画通りに研究を推進させるよう努力するが、エルゴチオネインの生合成に関与する酵素の研究やエルゴチオネインの生理機能に関する研究は他の研究グループでも活発に行われており、原著論文も発表されたため、本課題ではBurkholderia sp. HME13を由来とするエルゴチオネイン分解に関与する酵素群の研究をより重点的に推進する計画である。本研究により、これまでわかっていなかったエルゴチオネイン分解経路の全貌を理解できるものと考えている。
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